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砕牙「うぬは、長寿を望むか?」
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月明かりが、伊呂具の夜を静かに照らし出す。
(どういう意味だろう?)
質問の意図が気にかかりつつも、考えを頭の中で巡らせる。
○○「私は…―」
唐突な問いかけに、私は必死で思考を巡らせる。
○○「私は……短い命でも、与えられた時間の中で、幸せを見つけられたら、それでいいって……。 今まであまりそういうことを考えたことがなかったので、よくわかりませんが……そう思います」
精一杯、自分の胸の中にある気持ちを言葉にする。
砕牙「そうか……」
砕牙さんはそう言って、両手を伸ばし、そっと私の頬を包み込む。
○○「砕牙さん……?」
彼の手のひらの熱が、心地よい。
(……時間が止まってしまったみたい)
私達はしばらく、お互いに見つめ合っていたけれど…―。
砕牙「すまぬ。おかしなことを聞いた」
そう言って、砕牙さんが私の頬から手を離した。
○○「あの……どうかしたんですか?」
砕牙「……明日、我と共に来て欲しいところがある」
○○「え……」
砕牙「伊呂具の古い天狐の元へ。 かの者に願えば、この事態は収束するであろう」
○○「よかった……!」
砕牙さんの言葉に、私はほっと胸を撫で下ろすけれど…―。
砕牙「……」
砕牙さんの微笑みが、なぜだかとても切なく感じて…―。
○○「砕牙さん……?」
思わず、私は彼の服をきゅっと掴んでしまった。
砕牙「伊呂具の創始者である天狐が、我の願いを叶えてくれる。 うぬを見て、我は腹を決めた。種族の違いが妨げとなるならば…―」
○○「え……」
月明かりに、砕牙さんの影が映し出される。
強い意志を携えた眼差しに見据えられて、私はただ、その神々しい姿を見つめることしかできないでいた…―。