ケーブルカーが故障してしまい、私達は山頂に向かって歩き始めた。
(仙道って、歩きにくいな……)
展望台まで、あともう少しだけれど、山頂に向かうにつれて、その道はどんどん険しくなっていく。
エドモント「◯◯、辛くない?」
エドモントさんは、心配そうに私の顔を覗き込む。
(足手まといにはなりたくない)
◯◯「私なら大丈夫で…ー」
言い終わる前に、エドモントさんは私に背を向けてしゃがみ込む。
(えっ……)
エドモント「俺の背中に乗って」
◯◯「そんな、申し訳ないです! 私なら、大丈夫ですから!」
エドモント「俺は君に甘えてもらいたいんだ」
◯◯「エドモントさん……」
エドモント「いいから。ね、甘えて」
エドモントさんに真っ直ぐ見つめられ、私は思わず頷いた。
◯◯「……ありがとうございます」
エドモントさんの背中に、そっと身を委ねる。
エドモント「さあ、出発だ」
山道はどんどん険しくなるのに、工ドモントさんはそれを難なく登って行く。
その時、空から白い粉が舞ってくる。
その一粒が、私の頬にそっと落ちた。
(冷たい……雪?)
頬の冷たさに寒さを思い出して、私は自分の身体をさすった。
エドモント「◯◯、大丈夫?」
◯◯「はい……」
寒さで声が震えてしまい、思わず口をつぐむ。
エドモント「まただ……俺の前では無理をしないで」
エドモントさんは私を背中から下ろし、持っているストールで私を包み込んでくれた。
エドモント「少しは寒さをしのげるかな」
◯◯「でも……これでは、エドモントさんの体が冷えてしまいます」
包んでくれていたストールを返そうとすると、エドモントさんはそれを制した。
エドモント「いいから。そのままでいて」
次の瞬間…ー。
ふわりと体が宙に浮かぶ。
エドモントさんが、私の体を抱き上げてくれていた。
◯◯「エドモントさん……っ!」
エドモント「このまま君に無理をさせたくない」
悲しげに眉尻を下げる彼を見て、私は必死に首を横に振った。
◯◯「無理だなんて……! 私はエドモントさんとご来光を見たくて……」
エドモント「いいんだ。健康を願いにきたのに、風邪でも引いたら笑えないよ」
私を安心させるように、エドモントさんがくすりと笑いをこぼす。
エドモント「寒くなってきてしまったから、すぐに暖を取れる場所を探すよ」
優しい眼差しで見つめられると、申し訳ないと思いながらも身を委ねてしまう。
◯◯「……ありがとうございます」
少し歩いていくと、小さな山小屋が建っていた。
エドモント「よかった。とりあえず、あの場所に向かおう」
空は既に明るくなってきていた。
展望台でご来光を見ることができず、私はエドモントさんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった…ー。