第3話 待ち時間の間

ケーブルカー乗り場に到着すると、乗り場は人が一人もおらず、閑散としていた。

エドモント「もしかして、出発したばかりかな?」

時刻表を確認すると、一つ前のケーブルカーは数分前に行ってしまったばかりだった。

エドモント「次のケーブルカーまでは・・・・・・かなり時間があるみたいだ」

○○「少し待つことになりますね」

エドモント「ただここで待つだけというのは、つまらないな。そうだ、あそこに行ってみようか」

エドモントさんの視線を追うと、大きな建物やそこまでの道にたくさんの人々が集まっていた。

エドモント「この国の神様が祀られている社のようだよ。年初めで、さまざまな催し物が行われているはずだ」

○○「楽しそうです。ぜひ行ってみたいです」

私達は、すぐにその場所へと向かうことにした。

いくつもの屋台が立ち並び、まるでそこは縁日のような賑わいをみせていた。

○○「たくさんお店があって、どこから見ていいのかわからないですね」

エドモント「そうだね・・・・・・」

エドモントさんは注意深く周囲を見回している。

○○「エドモントさん?」

エドモント「○○、俺の傍を離れては駄目だよ」

ポケットの中で繋がれたエドモントさんの手に、力が籠もる。

次の瞬間・・・-。

○○「!?」

直ぐ近くで大きく鋭い音がする。

(何だろう・・・・・・?)

エドモント「何事だ!!」

エドモントさんは素早く私を抱き寄せると、音のした方向に鋭い視線を送る。

(さっきの音って、もしかして・・・・・・)

エドモントさんの視線を追うと、そこには屋台の射的場がある。

○○「・・・・・・射的の銃声?」

破裂音の正体は、射的の銃声だった。

エドモント「あれは・・・・・・何!? 射撃の大会?・・・・・・とか?」

エドモントさんは眉根を寄せたまま、射的場をじっと見つめている。

(エドモントさん、初めて見たのかな?)

○○「射的というゲームですね」

エドモント「・・・・・・射的?」

○○「欲しいものに銃口を向けて、落とすゲームです」

エドモント「・・・・・・銃を使うゲームか」

エドモントさんは、私を庇うように胸の中へと抱きいれる。

そして、さらにその手に力が入った。

(エドモントさん、危険なゲームだと思っちゃったのかな?)

私を守ろうとしてくれるその気持ちが嬉しいながらも、エドモントさんの胸の中に顔を埋めたままで、息がしづらくなってしまう。

(ちょっと・・・・・・苦しい)

○○「エドモントさん、私なら大丈夫です」

エドモント「本当? でも銃が・・・・・・」

エドモントさんは、恐る恐る私を抱く手を緩める。

○○「おもちゃの銃なので、子どもも参加できるゲームなんですよ」

エドモント「そ、そうなんだね・・・・・・」

○○「エドモントさん、射的をやってみますか?」

エドモント「ああ・・・・・・そうだね。何事も経験だ」

エドモントさんは小さくそう言うと、射的場へと向かった。

店主「はい、いらっしゃーい」

エドモント「これを、試させてくれ」

店主「まいど~」

エドモントさんは、緊張の面持ちでお店の人に硬貨を渡し、銃を受け取った。

エドモント「○○は、欲しい物はあるか?」

○○「あっ・・・・・・私はなんでも・・・・・・」

エドモント「遠慮しないで言って。○○が選ぶものを狙いたいんだ」

○○「私は・・・・・・」

一番上の棚に並んでいる、花の形をしたバレッタが目に入る。

(かわいい・・・・・・でも、狙いにくそうな位置にある)

エドモント「あの花の形の髪飾りかな?」

私の視線を追ったのか、エドモントさんがバレッタを指さす。

○○「あっ・・・・・・でも、少し難しそうですし・・・・・・」

エドモント「俺に任せて」

エドモントさんは、すぐさま銃口をバレッタへと向ける。

すると・・・-。

軽快な銃声音が響き渡り、バレッタは見事に落下した。

○○「エドモントさん、すごいです!」

思わず拍手をして、私は大喜びする。

エドモント「○○が喜んでくれて嬉しいよ」

エドモントさんは店主からバレッタを受け取ると、私の方を向き直る。

そして、私の髪に優しく触れると、そっとそれをつけてくれた。

エドモント「やっぱり、君によく似合う。君の魅力がこれ以上に増すと、嬉しいけど・・・・・・少し心配だな」

エドモントさんの指が私の髪を優しく撫でる。

夜風の冷たさを感じないくらいに、私の頬は熱を帯びていった・・・-。

 

 

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