ケーブルカー乗り場に到着すると、乗り場は人が一人もおらず、閑散としていた。
エドモント「もしかして、出発したばかりかな?」
時刻表を確認すると、一つ前のケーブルカーは数分前に行ってしまったばかりだった。
エドモント「次のケーブルカーまでは・・・・・・かなり時間があるみたいだ」
○○「少し待つことになりますね」
エドモント「ただここで待つだけというのは、つまらないな。そうだ、あそこに行ってみようか」
エドモントさんの視線を追うと、大きな建物やそこまでの道にたくさんの人々が集まっていた。
エドモント「この国の神様が祀られている社のようだよ。年初めで、さまざまな催し物が行われているはずだ」
○○「楽しそうです。ぜひ行ってみたいです」
私達は、すぐにその場所へと向かうことにした。
いくつもの屋台が立ち並び、まるでそこは縁日のような賑わいをみせていた。
○○「たくさんお店があって、どこから見ていいのかわからないですね」
エドモント「そうだね・・・・・・」
エドモントさんは注意深く周囲を見回している。
○○「エドモントさん?」
エドモント「○○、俺の傍を離れては駄目だよ」
ポケットの中で繋がれたエドモントさんの手に、力が籠もる。
次の瞬間・・・-。
○○「!?」
直ぐ近くで大きく鋭い音がする。
(何だろう・・・・・・?)
エドモント「何事だ!!」
エドモントさんは素早く私を抱き寄せると、音のした方向に鋭い視線を送る。
(さっきの音って、もしかして・・・・・・)
エドモントさんの視線を追うと、そこには屋台の射的場がある。
○○「・・・・・・射的の銃声?」
破裂音の正体は、射的の銃声だった。
エドモント「あれは・・・・・・何!? 射撃の大会?・・・・・・とか?」
エドモントさんは眉根を寄せたまま、射的場をじっと見つめている。
(エドモントさん、初めて見たのかな?)
○○「射的というゲームですね」
エドモント「・・・・・・射的?」
○○「欲しいものに銃口を向けて、落とすゲームです」
エドモント「・・・・・・銃を使うゲームか」
エドモントさんは、私を庇うように胸の中へと抱きいれる。
そして、さらにその手に力が入った。
(エドモントさん、危険なゲームだと思っちゃったのかな?)
私を守ろうとしてくれるその気持ちが嬉しいながらも、エドモントさんの胸の中に顔を埋めたままで、息がしづらくなってしまう。
(ちょっと・・・・・・苦しい)
○○「エドモントさん、私なら大丈夫です」
エドモント「本当? でも銃が・・・・・・」
エドモントさんは、恐る恐る私を抱く手を緩める。
○○「おもちゃの銃なので、子どもも参加できるゲームなんですよ」
エドモント「そ、そうなんだね・・・・・・」
○○「エドモントさん、射的をやってみますか?」
エドモント「ああ・・・・・・そうだね。何事も経験だ」
エドモントさんは小さくそう言うと、射的場へと向かった。
店主「はい、いらっしゃーい」
エドモント「これを、試させてくれ」
店主「まいど~」
エドモントさんは、緊張の面持ちでお店の人に硬貨を渡し、銃を受け取った。
エドモント「○○は、欲しい物はあるか?」
○○「あっ・・・・・・私はなんでも・・・・・・」
エドモント「遠慮しないで言って。○○が選ぶものを狙いたいんだ」
○○「私は・・・・・・」
一番上の棚に並んでいる、花の形をしたバレッタが目に入る。
(かわいい・・・・・・でも、狙いにくそうな位置にある)
エドモント「あの花の形の髪飾りかな?」
私の視線を追ったのか、エドモントさんがバレッタを指さす。
○○「あっ・・・・・・でも、少し難しそうですし・・・・・・」
エドモント「俺に任せて」
エドモントさんは、すぐさま銃口をバレッタへと向ける。
すると・・・-。
軽快な銃声音が響き渡り、バレッタは見事に落下した。
○○「エドモントさん、すごいです!」
思わず拍手をして、私は大喜びする。
エドモント「○○が喜んでくれて嬉しいよ」
エドモントさんは店主からバレッタを受け取ると、私の方を向き直る。
そして、私の髪に優しく触れると、そっとそれをつけてくれた。
エドモント「やっぱり、君によく似合う。君の魅力がこれ以上に増すと、嬉しいけど・・・・・・少し心配だな」
エドモントさんの指が私の髪を優しく撫でる。
夜風の冷たさを感じないくらいに、私の頬は熱を帯びていった・・・-。