第2話 手袋の温もり

光来山の頂上へ行くにはケーブルカーに乗る必要があり、

私達はその乗り場に向かって歩き始めた。

エドモント「時間がかかりそうだね」

頬に冷たい風が吹きつけ、ぶかぶかの手袋をはめた自分の手を見つめた。

(あったかい・・・・・・)

ケーブルカー乗り場までの道は、新年を祝う催しで人が溢れ返っている。

(すごい人・・・・・・うまく進めない)

エドモント「危ないな。もう少し近くにいた方がいい」

エドモントさんが、私の肩をそっと抱き寄せる。

○○「あっ・・・・・・ありがとうございます」

エドモント「遠慮することないよ。はぐれたら大変だ。 実は、俺もこういう人の多いところは少し苦手なんだ。 でも、君が隣にいてくれると全然気にならないよ」

エドモントさんとの距離が近く、胸の鼓動が早まっていく。

それを紛らわすために、私は夜空を見上げた。

○○「今日、ご来光が見られるといいですね」

エドモント「空が澄み渡っているから、きっと綺麗に見られるだろうね」

○○「山の上からご来光を見るなんて初めてで・・・・・・素敵な一年の始まりになりそうで嬉しいです」

エドモント「○○にとって、今年はどんな一年だった?」

○○「色々な経験をすることができた、新鮮な一年でした。 エドモントさんは、どんな一年でしたか?」

エドモント「今年のダジルベルク産の茶葉は例年より芳醇な香りで、収穫量も豊富だった。 そのおかげもあって、国も活気づいていい一年だったな」

○○「芳醇な香り・・・・・・想像するだけで飲んでみたくなります」

エドモント「今度お城に招待するよ。美味しい焼き菓子と共にティーパーティをしよう」

○○「わぁ・・・・・・楽しみです」

澄み切った夜空に、吐く息が白く浮かび上がる。

一瞬だけ、エドモントさんは小さく身を震わせた。

(エドモントさん、私に手袋を貸してくれたから)

(きっと、寒いのを我慢してるんだろうな・・・・・・)

○○「あの・・・・・・手袋ありがとうございました」

私は手袋を外し、エドモントさんに返す。

エドモント「いいよ。俺なら大丈夫だよ」

○○「でも・・・・・・すごく寒いですし」

エドモント「そうだ、いいこと思いついた」

エドモントさんは、私の右手をそっと握った。

そして、そのまま手を引き寄せられて・・・-。

(あっ・・・・・・)

エドモントさんは、上着のポケットの中で、私の手をそっと握った。

エドモント「ほら、この方がもっと近くにいられるし、暖かい」

彼の真っ直ぐな視線が私を射抜く。

エドモント「初めからこうしていればよかったね」

柔らかなその笑顔は、私の言葉を奪う。

その言葉を探す前に、私は小さく頷いていた・・・-。

 

 

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