光来山の頂上へ行くにはケーブルカーに乗る必要があり、
私達はその乗り場に向かって歩き始めた。
エドモント「時間がかかりそうだね」
頬に冷たい風が吹きつけ、ぶかぶかの手袋をはめた自分の手を見つめた。
(あったかい・・・・・・)
ケーブルカー乗り場までの道は、新年を祝う催しで人が溢れ返っている。
(すごい人・・・・・・うまく進めない)
エドモント「危ないな。もう少し近くにいた方がいい」
エドモントさんが、私の肩をそっと抱き寄せる。
○○「あっ・・・・・・ありがとうございます」
エドモント「遠慮することないよ。はぐれたら大変だ。 実は、俺もこういう人の多いところは少し苦手なんだ。 でも、君が隣にいてくれると全然気にならないよ」
エドモントさんとの距離が近く、胸の鼓動が早まっていく。
それを紛らわすために、私は夜空を見上げた。
○○「今日、ご来光が見られるといいですね」
エドモント「空が澄み渡っているから、きっと綺麗に見られるだろうね」
○○「山の上からご来光を見るなんて初めてで・・・・・・素敵な一年の始まりになりそうで嬉しいです」
エドモント「○○にとって、今年はどんな一年だった?」
○○「色々な経験をすることができた、新鮮な一年でした。 エドモントさんは、どんな一年でしたか?」
エドモント「今年のダジルベルク産の茶葉は例年より芳醇な香りで、収穫量も豊富だった。 そのおかげもあって、国も活気づいていい一年だったな」
○○「芳醇な香り・・・・・・想像するだけで飲んでみたくなります」
エドモント「今度お城に招待するよ。美味しい焼き菓子と共にティーパーティをしよう」
○○「わぁ・・・・・・楽しみです」
澄み切った夜空に、吐く息が白く浮かび上がる。
一瞬だけ、エドモントさんは小さく身を震わせた。
(エドモントさん、私に手袋を貸してくれたから)
(きっと、寒いのを我慢してるんだろうな・・・・・・)
○○「あの・・・・・・手袋ありがとうございました」
私は手袋を外し、エドモントさんに返す。
エドモント「いいよ。俺なら大丈夫だよ」
○○「でも・・・・・・すごく寒いですし」
エドモント「そうだ、いいこと思いついた」
エドモントさんは、私の右手をそっと握った。
そして、そのまま手を引き寄せられて・・・-。
(あっ・・・・・・)
エドモントさんは、上着のポケットの中で、私の手をそっと握った。
エドモント「ほら、この方がもっと近くにいられるし、暖かい」
彼の真っ直ぐな視線が私を射抜く。
エドモント「初めからこうしていればよかったね」
柔らかなその笑顔は、私の言葉を奪う。
その言葉を探す前に、私は小さく頷いていた・・・-。