反乱を引き起こした謀反者の男が、重病だとの報せが入った。
雷さんは報告を受け、考え込んでいたけれど……
雷「あの男が、病、か……」
ぽつりと、雷さんは悲しむように言葉をこぼして顔を上げた。
雷「……薬を用意しろ」
雷さんの言葉に、家臣の方達がどよめいた。
雷「王家専属の薬師に頼めば、何とかなるかもしれないからな」
(敵である人に、薬を……?)
従者1「恐れながら雷様……そのようなことをする必要が、一体どこに…-」
雷「あの男の起こした謀反と、病とは別の話だ」
私の表情を察してか、雷さんが言葉を発した。
雷「俺は、あの男に死んでほしくはない」
○○「雷さん……」
少し声音が小さくなった彼を、見つめると……
雷さんは、まるで照れてでもいるかのようにさっと視線を逸らした。
雷「……夢見も悪くなりそうだからな。 俺にできることがあったのに、死なれたのでは。 それに、これをきっかけに奴が思い直せば、和平の道もあるやもしれん」
(雷さん……)
従者2「お優しすぎます! せっかくこの謀反を終わらせる絶好の機会なのに…-」
従者3「その通りです雷様!」
次々に、家臣の方達が雷さんに詰め寄るけれど……
雷「黙れ! 俺がそうすると決めたのだ!」
その言葉に、その場が水を打ったようにしんと静まり返る。
○○「……私は、素敵な考えだと思います」
心からの言葉だった。
雷「○○……」
雷さんは目を細め、ひとつ深く頷いた。
それから、居住まいを正すと、改めて口を開いた。
雷「ここまで関わらせてしまったからには、話しておきたい……。 いや、聞いてほしいことがある」
雷さんは、改めて私に向き直った…-。