一晩中、私のそばで雷さんは見張ってくれていた。
(・・・・・・なんだか緊張して、あまり眠れなかった)
雷「起きたか」
ごそごそと布団の中で起き上がると、雷さんがこちらを振り返った。
朝日に照らされた顔は、ほぼ眠っていないというのに疲れすら見せていない。
○○「はい、ありがとうございます」
雷「何だ。よく眠れなかったのか?」
雷さんが起きぬけの私を見て、眉尻を下げる。
(恥ずかしい・・・・・・)
雷「まあ・・・・・・昨日あんなことがあったばかりだから、無理ないか」
○○「でも、雷さんも眠れなかったですよね」
雷「眠った」
○○「え・・・-」
雷「一刻ほど。だが安心しろ。 異様な気配を感じたときには、すぐさま飛び起きることができるよう日頃から鍛えている」
(そ、それは鍛えられるものなの・・・・・・?)
○○「・・・・・・」
雷「どうした。表情が固まっているぞ」
○○「す、すみません。驚いてしまって。 すごいですね」
雷「当たり前のことだ。 いつ何が起こるかわからないからな。 ・・・・・・しかし」
と、不意に雷さんが顔を赤らめて、私から視線を逸らした。
雷「・・・・・・胸元がはだけている。正したほうが良いのではないか」
○○「っ・・・・・・!?」
(わ、私・・・・・・!)
恥ずかしさに、慌てて胸元をかき合わせる。
雷「・・・・・・」
○○「・・・・・・」
気まずい沈黙が、部屋に流れて・・・-。
(恥ずかしい・・・・・・)
雷「弱った・・・・・・」
雷さんが、困り果てたように頭を掻いた。
○○「す、すみません・・・・・・」
雷「いや、俺の方こそすまなかった。そう、女なのだな。お前は」
それから、私達はしどろもどろに会話を交わしていたけれど・・・・・・
そのうち、なんだかおかしくなって・・・・・・目が合ったとき、二人で笑ってしまった。
雷「よし、着替えが済み次第、出発だ」
○○「はい」
雷さんの明るい表情に、こちらまで心が明るくなる。
(雷さんがいつもこんなふうに、笑える国になるといいな)
・・・
・・・・・・
そして出立の時・・・-。
私は、城を出て、雷さんと護衛の方に囲まれながら道中を歩いていた。
(雷さんまで来てくれるなんて)
雷さんは、辺りに気を配りながら、私のすぐそばで歩いてくれる。
ー----
雷「よし、では明日まで俺がお前の用心棒になろう。 明日の朝まで、ここで守っていてやる」
ー----
(守ってくれてるんだ・・・・・・)
無意識に彼を見つめてしまっていると、視線がぶつかった。
雷「・・・・・・」
○○「・・・・・・」
何と言葉をかけていいかわからず、互いに見つめ合っていたその時・・・。
雷「っ・・・・・・!?」
(えっ!?)
突如、大勢の武装した男達が襲ってきた。
武装兵「承和の者達だな・・・・・・その首、もらい受ける!!」
雷「○○! 俺の後ろに!!」
○○「あ・・・・・・わ、私・・・・・・」
突然の出来事に狼狽していると、雷さんが手を伸ばし、ぐいと私の体を引き寄せてくれた。
雷「しっかりしろ!」
刀と刀がぶつかり合う金属音と、人々の叫声、乱暴な足音。
戦場のような光景に、雷さんの腕の中で身を震わせて数刻・・・・・・
(終わっ・・・・・・た・・・・・・?)
雷さんは、しっかりと私の肩を抱き、大きく荒い呼吸を繰り返している。
雷「・・・・・・怪我人も数名、か」
辺りを鋭い視線で見渡し、雷さんは低い声で言った。
雷「・・・・・・大きな騒ぎにはしたくない。すまないが、一旦俺と城へ戻ってくれるか」
肩を抱かれたまま、雷さんに見下ろされる。
その瞳は、怒りと悲しみで揺れているようで・・・・・・
○○「・・・・・・はい」
深く頷き、彼の瞳を精いっぱい見つめ返した。
雷「行くぞ」
くずおれてしまいそうな足元を奮い立たせ、雷さんに支えられて城へ戻った・・・-。