雷さんの誘いを受け承和の国へ来たところ、賊が現れたと城に留まることになった・・・-。
滞在用に案内された客間は、広く豪華な座敷で、一人で過ごしていると寂しいくらいだった。
(街は、どんな状況なんだろう)
(雷さん達に何事もなければいいけど・・・・・・)
雷さんは出かけたきりだし、城内も慌しい雰囲気だ。
外の様子が気になって、襖を開いて廊下へ出てみると・・・・・・
○○「っ・・・・・・!?」
首筋にひたと冷たく鋭利なものが押し当てられた。
??「静かに。貴様、雷の女だな?」
一瞬のうちに、私は背後から誰かに捕らえられてしまった。
(な、何が起こっているの・・・・・・!?)
間者「一緒に来い」
○○「嫌・・・・・・っ!」
強引に連れ去られそうになった時・・・・・・
雷「何者だ」
(雷さん!?)
雷さんは声と同時に、私を連れ去ろうとする男の首元へ刀を押し当てていた。
間者「い、いつの間に」
雷「間者にしては間抜けだ。 そのように隙だらけで、よく我が城へ忍び込めたものだな」
間者「ひっ・・・・・・」
鋭い瞳がいっそう強く猛々しく、男を射すくめた。
腹の底から響くような低い声に、私まで背筋が凍るようだった。
雷「刀を引け。我が城でこれ以上の暴挙は、許さん。 命が惜しくば・・・・・・」
私の首に当てられていた刃先が、ぶるぶると震えている。
雷「去れ。さもないと・・・・・・」
間者「わ、わかったから斬らないでくれっ!」
悲鳴のような声を上げて、男は私を解放し、後ずさった。
そして・・・・・・
雷「行ったか」
男は足をもつれさせながら、一目散に逃げて行った。
雷「忍(しのび)。追え」
すぐに雷さんが、ちらりと天井を見上げて命じる。
雷「無事か」
雷さんがこちらを見る。
その瞳は男を射すくめた名残を残し、獲物を仕留める猛獣のように鋭い光を放っていた。
○○「はい。あ、あの、ありがとうございます」
声を震わせながらもお礼を言うと・・・・・・
雷「我が城で拉致などされては困る」
雷さんはため息を吐きながらも、少しだけ微笑んでくれた。
雷「・・・・・・」
不意に。雷さんが何の前触れもなく、私の首筋に触れた。
突然近づいた距離と、指先の感触に、頬が熱を持つ。
(な、何・・・・・・?)
雷「わずかに、傷がついている」
○○「え・・・・・・?」
(気づかなかった・・・・・・)
雷さんが、眉間に皺を寄せて小さくつぶやいた。
雷「手当てをさせよう。すまなかった」
○○「あ・・・・・・」
ゆっくりと、雷さんの大きな手が離れていく。
頬だけでなく、触れられた箇所も熱く熱を持ったようだった。
雷「城内の警備を強化する必要がありそうだ。 先ほどの男は、じき捕まるだろう」
独り言のようにつぶやく雷さんの横顔は、とても勇ましく頼もしく見えた・・・-。