承和の国、薫の月・・・-。
承和の国に到着した私は、広く豪華な謁見の間に通されていた。
目の前には、先日ユメクイの眠りから目覚めさせた雷さんと、国王様が座っている。
雷「受け取れ、トロイメアの姫。遠慮することはない」
国王「我が息子を救ってくれた礼だ。受け取ってもらわねば気が済まん」
雷さんの鋭い眼差しが、じっと私を見つめる。
(目覚めた時にも思ったけど、とても強くて綺麗な瞳・・・・・・)
見つめられると目が離せなくなって、不思議と胸が騒いだ。
○○「あ、あの、でも・・・・・・こんなに高価そうなものをいただくわけには」
目の前に広げられたのは、美しい絹製品や、いかにも高価そうな茶器。
宝石のたぐいに、細やかな刺繍が織り込まれた布など、私にはもったいないものばかりだった。
雷「お前は俺を、目覚めさせてくれただろう。 その礼をしなければならない」
雷さんは私から視線を逸らさないまま、強く言い切る。
(どうしよう・・・・・・)
と、その時・・・-。
家臣「失礼いたします」
家臣のような人が入ってきたかと思うと、国王様と雷さんに何やら耳打ちをした。
国王「っ!?」
雷「何・・・・・・?」
さっと二人の顔から血の気が引く。
雷「お前には、礼の品を渡し、すぐに出立を願う予定だったが・・・・・・すまない。 街に賊が現れたとの報せが入った。今、城を出るのは危険だ。 このまましばらく城へ滞在してもらう」
○○「え・・・・・・? あ、あの」
雷「すぐに部屋も用意させる。案じるな」
雷さんはそう私に告げると、国王様と共に慌しく出て行ってしまった。
その場にいた人達も、ざわめきながら二人の後を追うように出て行く。
その後すぐに案内人の人が来てくれたけれど、嫌な予感が胸を締め付けていた・・・-。