第1話 不穏

承和の国、薫の月・・・-。

承和の国に到着した私は、広く豪華な謁見の間に通されていた。

目の前には、先日ユメクイの眠りから目覚めさせた雷さんと、国王様が座っている。

雷「受け取れ、トロイメアの姫。遠慮することはない」

国王「我が息子を救ってくれた礼だ。受け取ってもらわねば気が済まん」

雷さんの鋭い眼差しが、じっと私を見つめる。

(目覚めた時にも思ったけど、とても強くて綺麗な瞳・・・・・・)

見つめられると目が離せなくなって、不思議と胸が騒いだ。

○○「あ、あの、でも・・・・・・こんなに高価そうなものをいただくわけには」

目の前に広げられたのは、美しい絹製品や、いかにも高価そうな茶器。

宝石のたぐいに、細やかな刺繍が織り込まれた布など、私にはもったいないものばかりだった。

雷「お前は俺を、目覚めさせてくれただろう。 その礼をしなければならない」

雷さんは私から視線を逸らさないまま、強く言い切る。

(どうしよう・・・・・・)

と、その時・・・-。

家臣「失礼いたします」

家臣のような人が入ってきたかと思うと、国王様と雷さんに何やら耳打ちをした。

国王「っ!?」

雷「何・・・・・・?」

さっと二人の顔から血の気が引く。

雷「お前には、礼の品を渡し、すぐに出立を願う予定だったが・・・・・・すまない。 街に賊が現れたとの報せが入った。今、城を出るのは危険だ。 このまましばらく城へ滞在してもらう」

○○「え・・・・・・? あ、あの」

雷「すぐに部屋も用意させる。案じるな」

雷さんはそう私に告げると、国王様と共に慌しく出て行ってしまった。

その場にいた人達も、ざわめきながら二人の後を追うように出て行く。

その後すぐに案内人の人が来てくれたけれど、嫌な予感が胸を締め付けていた・・・-。

 

 

 

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