太陽7話 レッドカーペット

翌日…一。

ウィルさんは私の泊まっているホテルへと再びやってきた。

彼の控室は劇場と目と鼻の先にあるこのホテルにあるそうで、

試写会が始まるまで、ここで時間を潰すらしい。

◯◯「あとどれくらいでしょうか?」

ウィル「まだ開始まではしばらくあるね。ほら、窓から会場が見えそうだよ?」

彼に窓辺へと手を引かれて、外を覗くと……

◯◯「……!」

劇場はちょうど窓の下にあったようで、

レッドカーペットの近くに大勢の人々が詰めかけているのが見える。

◯◯「すごいですね、あんなにたくさん……カメラとかも」

ウィル「いいね……まずまずの話題性だよ。 まあ、公開日は、もっと派手にしたいけれども」

その時、扉がノックされ、メイクスタッフが部屋へと入ってきた。

メイクスタッフ「監督、いいですか? そろそろ準備をしないと」

ウィル「ええ、別に監督がわざわざメイクなんかする必要なくない?」

スタッフ「そうはいきませんよ、舞台挨拶なんですから……。 ヘアスタイリストも別室にもう待機してますから」

ウィル「じゃあ、前に発注したゾンビの特殊マスクを……」

スタッフ「監督!」

ウィル「わかったよ、仕方ないなあ」

うんざりとした表情をして、ウィルさんがスタッフに引っ張られるように連れて行かれる。

◯◯「好評だといいですね、挨拶、頑張ってください」

ウィル「うん。あ、あと……」

◯◯「……?」

急に何かを思い出したように、ウィルさんはポケットからメモを取り出した。

ウィル「そうそう、伝え忘れるところだった、終わったら少し君の時間をもらっていい? ……話したいことがあるんだ!」

◯◯「はい、大丈夫です」

(一体なんだろう……?)

メイクスタッフ「監督、早くしてください!」

ウィル「はいはい」

慌ただしく呼ばれて、ウィルさんは部屋を後にした。

……

それからしばらくして、青空に花火の音が鳴り響いた。

◯◯「……っ」

(始まった!)

窓から身を乗り出して、劇場の方を眺める。

すると一際大きな歓声が上がって、ウィルさんの姿が現れた。

レッドカーペットの上を堂々とウィルさんが進む。

観客1「きゃああああーーーー! 」

観客2「完成ずっと楽しみにしてました!」

詰め掛けたファンの黄色い声が、ここまで聞こえてくる。

フラッシュも恐ろしいほどにたかれ、見続けていると目が眩みそうになる。

ウィル「……」

その中を手を振りながら進む彼は、綺麗な笑みを浮かべている。

(あんなに大勢の人達に囲まれて……)

今更になってウィルさんの映画が、どれだけ多くの人に待ち望まれていたのかを知る。

世界が惚れる新進気鋭のウィル・ビートン監督……

(全然、知らなかった……)

だけどこうして別の場所から彼の姿を見ていると、まるで遠い場所の人にように思えてきて、胸が少しだけ痛んだ…ー。

 

 

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