ウィルさんと一緒のスタジオ見学を終えて…ー。
外に出ると、空にはすっかり星が輝いていた。
◯◯「もうこんな時間だったんですね」
ウィル「楽しくてつい時間でも忘れちゃった?」
◯◯「はい。少し怖かったけど、いろいろ見せていただいて嬉しかったです」
ウィル「僕もだよ、君が今見せてくれてるその笑顔とか、恐怖に歪む顔とか、忘れたくないと思ったね」
くすりと笑って、怪我をしていない方の私の手を取る。
ウィル「久々のいい息抜きになった」
◯◯「ずっと忙しかったんですか?」
ウィル「うん、二年ぐらい、映画作りに没頭してたかな?」
◯◯「そんなに!?」
宿にしているホテルに向かっていると、大きな劇場の前を通りかかった。
何やら大勢のスタッフが設営の準備をしている。
ウィル「そういえば僕の新作は、明日ここでお披露目なんだよ。 あのフィルム、今夜中に仕上げないと……ククッ」
言いながら、ウィルさんが突然笑い出す。
ウィル「ゴメンゴメン、つい君の怖がっている時の顔、思い出しちゃって……」
◯◯「……もう」
けれど、ウィルさんのそんな言葉も、今では自然に受け取れるようになっていた。
ウィル「明日は、楽しみにしていてね?」
◯◯「……はい!」
そして、ホテルの前に到着した。
ウィル「おやすみ、◯◯」
私を見送りに来てくれたウィルさんは静かにそう囁いて……
私がホテルの中に消えるまで、ずっと手を振ってくれていた…ー。