差出人のない手紙が届き、指定された場所へ向かうと……。
?? 「……トロイメアの〇〇様ですね」
他国の衣をまとった使者が二人、そこで私を待っていた。
(この人の顔、どこかで……?)
そのうちの一人の顔に見覚えがあり、はっと息を呑む。
晩餐会の夜に、ミリオンくんと親しく話していたメスキナ国の大臣だった。
(この人が……!)
メスキナ大臣「手紙に書いた通り、訂正記事を書く代わりに、一つ条件があります」
〇〇「条件とは……?」
メスキナ大臣「トロイメアの姫として、シンセアとの協定を破棄していただく」
思わぬ申し出を受け、心に戸惑いが浮かぶ。
〇〇「それは、私が決められることでは……」
メスキナ大臣「ここまで来て渋るのですか?」
使者は冷たく笑って、僅かに口の端を持ち上げた。
メスキナ大臣「トロイメアの姫も薄情なお方だ。 シンセアがこのまま廃れても構わないと仰るのですね?」
〇〇「そんな、私は……!」
メスキナ大臣「貴方様も、あの王子の美しい仮面に騙されているのです」
使者は同情するように、私を見つめて眉尻を下げた。
メスキナ大臣「ミリオン国は、嘘と欺瞞にまみれた王子によって支配された愚かな国……。 今こそ立ち上がり、王子の黒い思惑から民を解放する時なのです」
(そんな……)
ミリオンくんの、哀しい過去を思い出す。
貧困にあえぎながら、皆の幸せだけを一途に追い求め……
美しい笑顔の裏で、ひたすら苦しみに耐えていた彼の孤独を思う…-。
〇〇「残念ながら……貴方の言葉は、私にとっての真実ではありません」
私の答えに、大臣の顔つきが変わる。
〇〇「私はミリオン王子を信じています。噂に屈することなく、この国を守り抜いてくれると……」
メスキナ大臣「そうですか……では。 手っ取り早く、貴方に我が国へ来ていただくことにしましょう」
(!?)
もう一人の使者が私を抱きかかえ、口元を抑え込む。
(この匂い……?)
くらりと意識が揺れ、視界がぼやけていった……。