それから、しばらく……。
ミリオン「他国の情勢に影響されて、相場が値下がりしてる……このままじゃ商人達の不満が募るな。 まったく、無能な輩が俺の足を引っ張るんだから」
ミリオンくんは経済紙を机に広げ、深いため息をこぼした。
ついさっきまで、来賓の前でにこやかに話をしていたのに……
あの夜以来……
ミリオンくんは私の前でだけ、素の表情を見せてくれるようになった。
ミリオン「……なんだよ」
私の視線に気づいたミリオンくんが、露骨に眉をしかめる。
〇〇「いえ……ただ、器用だなぁと思って」
ミリオン「……は? それだけ?」
〇〇「はい、見事な使い分けですよね」
ミリオン「ふつう、ヤな奴だなとか思うだろ」
(嫌な奴? ミリオンくんが……?)
時折、乱暴に振る舞うことがあっても、彼が心からこの国を大切に思い、弱い立場の者達を、必死に守ろうとしていることはよくわかっていた。
〇〇「私はミリオンくんのこと、ヤな奴とは思いませんよ? ね?」
子猫「にゃぁ~」
ミリオン「……やっぱお前、変人なんだな」
甘える子猫の喉を撫でてやりながら、ミリオンくんがぽつりとつぶやく。
(私、何かおかしなこと言っちゃったのかな?)
素っ気ない彼の態度に、苦笑いを浮かべると……。
従者「ミリオン様!」
血相を変えた従者さんが、部屋へ駈け込んできた…-。