太陽9話 本当の彼

予定していた公務をすべて中止し、ミリオンくんの部屋へ戻ってきた。

ミリオン「痛むか……?」

〇〇「もう大丈夫です。お医者様も、痕は残らないだろうと仰っていましたし」

心配そうなミリオンくんに、私は笑顔をみせる。

ミリオン「そうか……」

(あの女性も、本気で彼を傷つけようとしたんじゃないんだろうな……)

ミリオン「あの時……民の前で、お前がああ言ってくれなかったら」

そう言いかけて、ミリオンくんの表情が重く陰る。

ミリオン「……なあ、お前にはわかるか?」

〇〇「え……?」

ミリオンくんは、包帯を巻いた私の手を取り、柔らかく包み込んだ。

ミリオン「本当の僕は、どこにいるんだろうな……」

力なくつぶやきながら、ミリオンくんが長いまつ毛を伏せる。

ミリオン「この数日間……お前といると気が楽だった。きっとこれが、本当の僕なんだと思った。 それをお前も受け入れてくれたから……ほっとしていた」

〇〇「ミリオンくん……」

ミリオン「けど……今日、僕を信頼してくれてる皆の笑顔を見て……。 国を……民を豊かにするためには、あの張りついた笑顔だって必要なんだって、そう思った……。 僕は……本当の僕は……」

(本当の、ミリオンくんは……)

私はミリオンくんの手を握り返し、そっと瞳を覗き込む。

〇〇「本当のミリオンくんは、ここに……今、私の目の前にいます」

ミリオン「〇〇……?」

ミリオンくんの澄んだ瞳が、躊躇うように私を映した。

〇〇「どんなミリオンくんも……本当のミリオンくんですよ」

ミリオン「っ――」

ミリオンくんは、はっとしたように目を見張り……

やがて静かに微笑みながら、私の手を優しく握り返す。

ミリオン「ああ……そうか。そうだな」

(ミリオンくん……)

子猫「にゃあ~」

子猫がやって来て、ミリオンくんの足元に頬を摺り寄せた…-。

 

 

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