月7話 フロストルール

(どうか、フロストさんに何も起こりませんように……)

空にお祈りをしたけれど……大凶の文字が頭をよぎり、ため息を吐いてしまう。

フロスト「大凶を引いたのは俺なのに、何でお前がそんな顔をする?」

フロストさんが私の手からおみくじを取り上げ、無造作に手の中で丸めた。

○○「いえ、そうですよね! 遊びですし!」

気持ちを切り替え、明るい声を出してみせる。

けれどフロストさんには、私の不安が伝わってしまったようだった。

フロスト「……わかった」

フロストさんは、私に背を向け、おみくじの場所へと戻っていく。

そしてお財布から多すぎるお金を入れると、おみくじをもう一度振った。

○○「あの、何をしているんですか?」

フロスト「大凶とやらがいけないんだろう? では、大吉とやらが出るまで引けばよい」

○○「ええ!」

あまりにあっけらかんと言われ、驚いてしまった。

○○「あの、おみくじって、そういうものでは……」

子ども「そうだよ~。お兄ちゃん、ずるいんだ~」

子ども達が集まってきて、さわぎ立てる。

フロスト「うるさい。お前たちもやれ。 いいか? 大吉が出るまでだぞ」

何人もの見知らぬ子どもの分もお金を払い、そう言い渡すと、自分も熱心におみくじを引き続けた。

(……何だか、子どもみたい)

フロスト「……大吉とやらは本当に入ってるのか」

結局、フロストさんは、大吉を引くまでに21回もおみくじを振った。

フロスト「見ろ」

フロストさんは、私の目の前に、誇らしげに大吉のおみくじを広げる。

(こんなところもあったんだ)

○○「よ、よかったです……」

何だか可愛く思えて、思わず笑ってしまった。

すると……

フロスト「……それでいい」

○○「え?」

フロストさんは、私の頭にポンと手を置く。

優しい瞳で見つめられ、今度は自分が小さな子どもになったような気持ちになった。

フロスト「大凶だの大吉だのはどうでもいい。お前はそうやって笑ってろ」

フロストさんの優しい声が頭上から降り注ぐ。

頬が熱く、鼓動は驚くほどに早くて……私は彼の顔を見上げることができずにいたのだった…―。

 

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