空はどこまでも澄んで、おめでたい新年の日を祝福しているように見える。
けれど……
○○「フロストさん、大丈夫ですか?」
私達の周りだけ、不穏な空気が流れているような気がした。
フロストさんは、ぶつけた頭をこすりながら、子ども達に羽根を返しに行く。
フロスト「偶然だろう。気にすることはない。気をつけて遊べ」
フロストさんが羽根を返すと、子ども達はいっせいに頭を下げる。
子ども達「ご、ごめんなさい!!」
フロストさんのこめかみを見ると、小さなたんこぶが覗いていた。
(痛そう……)
○○「何か、冷やすものを……」
フロスト「いや、いい」
フロストさんは私の手を握り引き止める。
フロスト「それより、指先が冷たいな。何か温かいものでも飲もう」
そうして、フロストさんに手を引かれるままに甘酒屋さんの前に到着すると……
甘酒屋「兄さん残念!ちょうど兄さんの前で売り切れだ!」
フロスト「……」
(ど、どうしよう……!)
フロストさんのご機嫌が心配で、私は必死に頭を巡らせた。
(だって、今日は『穏やかな新年』を楽しんでもらうはずだったのに。挽回したい……)
○○「あ、あの!お団子はどうですか?お団子、美味しそうです」
フロスト「……ああ」
(よかった)
○○「あんことみたらしとゴマ……どれにしますか?」
フロスト「アンコとやらにしてみようか」
○○「あんこ、すごく美味しいですよ」
私達は、それぞれにお団子屋さんからお皿を受け取る。
○○「おいしそう。中にあんこが入ってるのかな?」
つとめて明るくそう言って、お団子にかぶりつく。
美味しいあんこのお団子を食べていると……
フロスト「アンコというのは、どれだ」
○○「え?」
フロストさんの手元を覗くと、あんこのお団子のはずなのに、中まで全て真っ白だった。
(あんこが、入ってない……)
フロスト「……」
私は、こっそりフロストさんのおみくじを確認した。
(欲しいものは手に入らないって書いてある……他にも……なくしものをするとか、旅行は危険だとか……)
フロスト「……なるほどな」
(どうしよう……)
フロストさんが冷たく微笑んでいる。
その氷のような微笑みに、周囲の空気までが凍りついていくような気がした…―。