月最終話 傷の罪

翌日・・・―。

隣国への贈り物を選ぶというキースさんい付き添い、街へとやってきていた。

(キースさん・・・・・・歩くの早い)

(でも、頑張ってついて行かなきゃ)

乗っていた馬車がどんどんと遠ざかり、私は必死にキースさんの後を追いかける。

(それにしても、いろんなものがあるなあ)

美しい布や装飾品、陶器などに見とれていると、

○○「あっ・・・・・・」

私は向かいから来た男性にぶつかられ、足をすべらせてしまった。

キース「○○?」

キースさんが振り返り、地面にしゃがみ込んだ私に手を差し伸べてくれる。

○○「だ、大丈夫です・・・・・・っ」

膝にできたかすり傷にかすかに眉をしかめると、キースさんは冷たい眼差しで私を見据えた。

キース「・・・・・・」

○○「・・・・・・?」

キースさんはそのまま私を助け起こすと、そのまま無言で歩き出していった。

(キースさん、怒ってる?)

街人「お譲さん、このハーブは擦り傷に効くよ!サービスだ」

○○「ありがとうございます」

不安に思いながらも、親切な店主さんに声をかけられて、私は笑顔でお礼を言った。

キース「・・・・・・」

受け取ろうとすると、キースさんが猛然とこちらへ引き返してくる。

キース「店主、礼を言う。○○、行くぞ」

私の代わりに店主さんの手からハーブを受け取ると、

キースさんは私の手を引き歩きはじめる。

○○「キースさん?」

(やっぱり、キースさん怒ってる?)

(こっちは来た道なのに・・・・・・)

私の手を引き無言で道を引き返すキースさんに、声をかけることができなかった。

(私、また何をしてしまったんだろう)

無言で馬車に乗り込むと、キースさんは御者さんにハーブを渡し、城へ戻るように言いつける。

キース「・・・・・・」

黙ったままのキースさんに見つめられることに耐えきれず、私は窓の外へ目をやった。

キース「何を見ている?」

○○「えっ・・・・・・」

キースさんの鋭い視線が私を射抜く。

キース「俺の他に見るものがあるのかと聞いているんだ」

○○「キース、さん・・・・・・?」

キース「言っただろう、お前は俺の奴隷だと」

○○「ご・・・・・・ごめんなさい」

恐ろしさのあまり、私はぎゅっと瞳を閉じる。

すると彼は私の手首を掴み、突然に座席に押し倒した。

スチル(ネタバレ注意)

○○「・・・・・・っ!」

驚いて目を開けると、キースさんの漆黒の瞳にはっきりと私が映っていた。

○○「キースさん・・・・・・?」

キース「勝手に傷など作って・・・・・・」

低く響く声に、胸の奥が大きく音を立てる。

キース「どういうつもりだ」

○○「・・・・・・っ」

キースさんはそう言いながら、私の膝にできたかすり傷にそっと指を這わせた。

○○「痛っ・・・・・・」

キース「お前は俺が管理すると言ったのを、もう忘れたのか?つまり、お前は俺のものだ。 勝手に傷をつけるな」

○○「・・・・・・っ」

触れられた膝の傷が痛み、私はぎゅっと唇を噛む。

キース「・・・・・・わかっていないようだな」

○○「あっ・・・・・・」

長い指が私の唇をこじ開け、口内に差し入れられる。

キース「ほら見ろ・・・・・・唇に傷ができただろう」

キースさんの瞳に捉えられ、私は身動きをすることもできない。

そのまま彼の瞳が近付いて・・・・・・

○○「・・・・・・っ」

唇にできたばかりの傷が、そっと舐められるのを感じた。

キース「お前は、俺のものだ」

キースさんの囁きが、耳元で響く。

キース「よく覚えておけ」

冷たい眼差しが、私を見据えている。

○○「はい・・・・・・」

すると、私の唇に傷を塞ぐように、彼の唇がそこに重ねられた。

○○「んっ・・・・・・」

駆ける馬車の音すら遠くなっていく・・・・・・

甘い痛みを感じながら、

私はキースさんの腕に身を委ねることしかできなかった・・・―。

 

 

おわり。

 

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