桜花「私の、傍にいてくれませんか……」
桜花さんの手を握ったまま、私は答えを出せずにいた。
その時…―。
??「桜花」
威厳のある声が、部屋の空気を震わせる。
振り返ると、襖が開いていて、国王様がたった一人でそこにたたずんでいた。
桜花「父上……」
弱々しい声で、桜花さんが呼びかけると、国王様は絞り出すような声で続けた。
国王「桜花、すまない。私のせいで……」
それを聞くと、桜花さんは寂しげに微笑んだ。
桜花「謝ってほしい訳では、ないのですよ」
ただ、と囁いて、言い淀むように目を伏せる。
再び目を開いた時、桜花さんの瞳には悲しい決意が秘められていた。
桜花「父上の跡を継げないこと、この国を守れぬことを、お許しいただけますか」
国王「それはつまり……」
桜花「○○さんを好きという気持ちのまま生きることを、選びたいのです」
桜花さんが、そっと私を抱き寄せる。
桜花「お願いです、○○さん……私の傍にいていただけませんか」
再びの問いに、私ももう自分の気持ちを偽ることはできなかった。
○○「……」
視界がにじむのをこらえながら、静かに頷く。
桜花「……! ありがとう……」
国王様に深く一礼してから、私は桜花さんを見上げた。
○○「私……私も、桜花さんのことが…―」
心から嬉しそうに、桜花さんが笑いかけた時だった。
??「恋を、してしまったのですね……桜花殿」
突然、静かな怒りを湛えた声が、部屋に響いた…―。