しばらくしてメイドさんが食事を持ってきてくれると、キースさんは人払いをする。
キース「口を開けろ」
○○「え?」
キース「食べさせてやると言っている」
○○「・・・・・・っ」
驚いて頬を染めた私に、キースさんはスープをすくってくれた。
○○「・・・・・・ありがとうございます」
ドキドキと鳴る胸の音に戸惑いながらも、スプーンを口に含む。
微かにジンジャーが香るスープは、緊張のせいで味がほとんどわからなかった。
キース「あと少し、食べられるか?」
キースさんの声に、胸の高鳴りを抑えてどうにか頷き返す。
そうしてスープを半分ほど食べると、彼は私の唇を指先でぬぐった。
キース「もう薬を飲んでも大丈夫だろう」
キースさんにガラスの水差しを唇にあてられ、促されるままそれを口にふくんだ。
○○「ありがとうございます・・・・・・」
微かに甘い薬を飲み終えて、私はぺこりと頭を下げる。
キース「全く・・・・・・なぜ無理をした。 オルゴールのことなら、気にする必要はないと言っただろう」
○○「でも・・・・・・」
キース「自分の管理もできないのか?倒れるまで気づかないとは、呆れた奴だ」
キースさんは私をベッドに寝かせ、掛布をかけてくれながら小言を言った。
○○「・・・・・・」
キース「よくわかった。お前が、一人では何もできないということがな」
(償いをするつもりだったのに、また迷惑をかけてしまった)
○○「・・・・・・ごめんなさい」
(私、本当にダメだな)
ただ謝ることしかできず、私は掛布で顔を隠した。
キース「・・・・・・まあ、いい。 そろそろ薬が効きはじめる頃だろう。今日のところは休め」
そう言って掛布の上から私の頭を撫でると、彼は部屋を出ていった・・・―。
・・・
・・・・・・
それから数日後・・・―。
キース「もういいと言っても聞かないのか」
○○「きちんと、お詫びをしたいんです」
体調が戻った私は、キースさんの再三の制止も聞かず、彼のお世話に戻っていた。
キース「全く・・・―」
キースさんは呆れたようにため息を吐いた後、ゆっくりと口を開いた。
キース「・・・・・・ならば、こうしよう」
キースさんの漆黒の瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。
キース「望み通り、お前は俺の奴隷だ。その代わり、お前のことは俺が管理してやる。 ・・・・・・いいな」
冷たい声で言い、彼は私の額に手を当てる。
その手のひらの温かさに、胸がトクンと音を立てる。
けれど私はこの時、キースさんの言葉の意味を理解できてはいなかった・・・・・・