翌朝…-。
雨露が残る庭を、太陽がキラキラと照らしている。
〇〇「……キースさん?」
朝起きるとキースさんが手ずから朝食を用意してくれていて、私は驚きに目を瞬かせた。
キース「食べられる味にはなっているはずだ」
〇〇「もしかして、キースさんの手作り……?」
キース「……不満か」
〇〇「いえ、そんな……! い、いただきます」
コーンスープをスプーンですくい、そっと口に運ぶ。
(嬉しい……でも、どうしたんだろう)
ふと横を見ると、キースさんが心配そうな眼差しでこちらを見つめていた。
キース「……どうだ」
〇〇「お……おいしいです」
キース「そうか」
どこかホッとしたような彼の口調に、私は思わず微笑んでしまった。
キース「何だ」
〇〇「いえ、嬉しくて」
キース「……お前が雨に濡れたのは、二日とも俺のせいだからな」
ほとんど聞こえないぐらいの声で、キースさんがつぶやく。
〇〇「キースさん?」
キース「……いい、気にするな。それより、氷枕を変えよう」
〇〇「いえ、キースさんにそんなことしていただく訳には」
キース「いいから」
そう言って私の頭の下から氷枕を取り出すと、キースさんは誤ってそれを掛布の端にこぼしてしまう。
キース「悪い……」
〇〇「いえ……」
キース「……俺は人を使う側の人間なんだ。こういうことは、不慣れなんだ」
キースさんは恥ずかしそうにそう言って、視線を逸らした。
(耳が、赤い……)
その姿に、思わず頬が緩んだ。
(初めは怖かったけど……優しい人なんだ)
(でも、やっぱりこんなことしてもらうのは申し訳ない)
(お詫びをしなきゃいけないのは、私の方なのに)
焦りを感じながらも、私の心は暖かかった。
…
……
それから数日後…-。
すっかり体調も回復し、私はキースさんの姿を探して庭を走っていた。
(これでまた、キースさんのお世話ができる)
(たくさん看病してもらったし、お返ししなきゃ)
〇〇「キースさん」
ベンチで読書をするキースさんの姿を見つけ、私の声が弾む。
キース「もういいのか?」
〇〇「はい、本当にありがとうございました」
キース「そうか」
〇〇「何か御用はありませんか?」
勢いよく尋ねると、キースさんが驚いたように瞳を瞬かせる。
キース「お前……。 いつまで、そんなことをしているつもりだ」
怒ったようにそう言うと、キースさんは私の顎をそっと持ち上げた…-。