こよみの国・九曜 奏の月…―。
年初めの今日、私はこよみの国へとやって来た。
年に一度、この国には年の始まりを祈るために、各国の人々が訪れるという…―。
(まるで初詣みたい……)
通り沿いには出店が立ち並び、人々の活気で賑わっていた。
その時…―。
??「○○!」
○○「え……?」
名前を呼ばれて振り向くと……溢れかえる人々の中、アインツさんが私に向けて手を振っていた。
○○「アインツさん……!」
人波をかき分けて、彼が私の方へとやって来る。
アインツ「驚いた!まさか、こんな所で会うとはな!」
○○「私もです」
アインツ「新年早々、なんて縁起がいいんだ!」
そう言って、アインツさんは満面の笑みを浮かべる。
アインツさんは、時の国・フォーラントの王子様。
いつも明るくて、自信に溢れていて……少し大仰な口調で話す彼といると、元気をもらえるような気がしていた。
(元気そう……こんなに喜んでくれるなんて、嬉しいな)
相変わらずのまぶしい笑顔を向けてくれる彼に、私は思わず心の中でそうつぶやく。
アインツ「○○は、一人なのか?」
○○「はい。お詣りだけして帰ろうと思っていたので。まさかこんなに賑わっているとは思いませんでした」
アインツ「世界中の人間が集まるからな」
アインツさんは顎に手を当てて考えこむ。
(どうしたんだろう……?)
アインツ「よし!オレと一緒に回ろう!」
○○「え……?」
アインツ「一人で回るのは大変だからな!オレがいれば華麗な足さばきでこの人込みもすり抜けられるぞ!」
○○「いいんですか?」
アインツ「いいんだ!オレも今は一人だからな!」
○○「……今は?」
アインツ「それにせっかく会えたんだ!そうだろう?○○!」
彼は力強い手で私の手を握った。
○○「はい……!」
アインツ「よし!」
『今は』という彼の言葉を少し疑問に思いつつも、私は彼の手の温かさに胸をときめかせていた…―。