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桜花『これ以上あなたに触れられると、抑えきれなくなってしまう。 どうか、私にはもう近寄らないで……』
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桜花さんの拒絶を思い出し、私は扉の前で立ちすくんでいた。
この扉の向こうでは、今も病に苦しむ彼がいる。
(私には、何もできない……)
声をかけることもできず、その場を立ち去ろうとしたその時…-。
??「○○様」
声のする方へ振り向くと……
○○「国王様……!」
突然現れた国王様に、私は慌てて頭を下げる。
国王「○○様にお話したいことがあるのですが……少しお付き合いいただけますか」
(お話……?)
国王様の深刻そうな表情が、私の胸をざわめかせた……
私達は二人、桜の花びらが舞い散る景色を眺めながら歩いていた。
国王「桜花のあれは……ただの病ではないのです」
○○「え……」
国王様は、少しためらったのちに、重い口を開いた。
国王「呪いです……原因は、私にあります」
(呪い……?)
聞き慣れないその言葉に、思わず立ち止まってしまう。
国王「王位に就く前、私には恋人がいました」
それは、身分違いの恋だった。
当然、次期国王となる彼は、周囲から反対を受けて…-。
結局、恋人を捨て、現在の王妃との結婚を選んでしまった。
国王「恋人は……呪術に長けていました。彼女は怒りのままに、生まれた子どもに呪いをかけたのです」
(呪術……?)
―――――
桜花『申し訳ありませんが、城へ向かう前に会わなければならない者がいます』
○○「会わなければならない人……?」
桜花「ええ、呪術師の柴珠(しじゅ)殿です」
―――――
その言葉に、紫珠さんと、怯えたような桜花さんの表情を思い出す。
(もしかして……)
国王「呪いは強力でした。そして今、まさに桜花を苦しめている」
○○「……どういう呪いなのですか?」
ためらいながらも問うと、国王様は悲しそうな眼差しを私に向けた。
国王「恋をすると、命を失うという呪いです」
○○「恋をすると……死ぬ……?」
理解が追いつかずに、私はその言葉を繰り返す。
(桜花さんは、恋をしている。そして、もうすぐ、死んでしまう……?)
○○「それは…-」
そう言いかけた時だった。
女中「た、大変です! 桜花様が!」
桜花さんの部屋から、悲鳴が聞こえてきた。
(桜花さん……!?)
私と国王様は、声が聞こえた方へと駆け出した…-。
桜花「○○さん……!」
桜花さんが額に汗を浮かべながら、こちらにゆっくりと歩み寄る。
○○「桜花さん……!」
女中「いけません! 桜花様! お体が…―」
桜花「大丈夫……止めないでくれ」
やがて私のところまでたどり着いた彼は、力尽きたようにその場に膝をついた。
○○「……桜花さん」
震える肩に手を触れようとして、はっとして思いとどまる。
(触れてはいけない……)
けれど、その手を桜花さんが掴んだ。
○○「……!」
桜花「やはり、私には無理ですね……○○さん、お話があります」
執事「桜花様、なりません。お体を横に……」
桜花「大丈夫だ。彼女と二人きりにしてくれないか?」
執事さんを制すると、
桜花「聞いてくれるかな?あまり面白い話ではないけど……」
桜花さんにまっすぐ見つめられ、私は小さく頷いた…-。