桜花さんは息を荒げながらも、なんとか立ち上がった。
桜花「大丈夫……です。心配をかけてばかりで、すみません」
○○「謝らないでください。早くお部屋へ戻りましょう!」
寄り添い支えようとする私の手を、桜花さんはそっと優しく引きはがした。
(花びらを取ろうとした時と、同じ……)
ふと思い出し、切なさと寂しさが胸にこみ上げる。
私のその様子を察したのか、桜花さんが表情をさらに曇らせる。
桜花「申し訳ありません。気を悪くなさらないでください……でも」
握ったままの私の手を見つめて、桜花さんは目を伏せた。
桜花「これ以上あなたに触れられると、抑えきれなくなってしまう」
(どういうこと……?)
桜花「どうか、私にはもう近寄らないで……」
口を開こうとした時、桜花さんの異変に気づいた従者さん達が庭へとやってくるのが目に入った。
従者「桜花様!」
桜花「時間切れ、か……」
小さくつぶやくと、桜花さんは従者さんに支えられて、私に背を向けた。
遠くなる桜花さんの背中を見送り、私はただ、呆然とその場に立ち尽くした…-。