窓から見る夜空は寂しくなるくらいに澄んでおり、月はただ静かに佇んでいた。
一人残された私は客間へ戻ってそんな空を眺めていた。
(私、どうしたらよかったのかな……?)
暗い気持ちで眺める夜空の下には煌々と輝く街の光が見える。
秘書官「姫様、よろしいでしょうか?」
その時、扉の外から秘書官の方に声をかけられた。
◯◯「はい、どうぞ」
秘書官「沈んだお顔をしてらっしゃいますね……。 そろそろ祈念の儀が始まりますから、気分転換にどうでしょう?」
(祈念の儀……今日だったんだ)
ー----
ヒノト「参ったな……ちゃんと準備したかったのに」
◯◯「準備……?」
ヒノト「……こっちの話」
ー----
(あれは、このことだったんだ…)
秘書官の方に勧められて私は儀式を行う神楽殿へと向かったのだった。
神楽殿の周りには、年に一度の奉納を一目見ようと大勢の人々が集まっていた。
けれど、ヒノトさんの姿はどこにも見当たらず……
ー----
ヒノト「君の優しさは、俺の心を傷つけるものなのかな? それともーー」
ー----
私の心の中には、先ほどのヒノトさんの言葉ばかりが木霊する。
(私、何をしてるんだろう……)
(あの時のヒノトさんの言葉は、どういう意味だったのかな?)
誤ることも、彼の気持ちを受け入れることもできないまま…ー。
(やっぱりこのままじゃ駄目だ)
私は儀式が始まろうとするその場から、弾かれたように飛び出したのだった。
城に戻ると、ヒノトさんの部屋の扉から微かに灯りがもれていた。
控えめに声をかけて部屋へ入ると、彼は窓際から神楽殿の方を眺めていた。
ヒノト「……」
真っ暗な闇の中に浮かぶ神楽殿の赤い光が、彼の瞳に映り込んでいる……
◯◯「……祈念の儀はいいんですか?」
ヒノト「今さらだよ、俺は君をこの部屋に連れ込んだ時からサボる気だったし……」
静かに口を開いた彼は皮肉そうな笑みを浮かべた…ー。