ようやく夜の九曜の街で彼の姿を見つけることができた。
ヒノト「……どうして来たの?」
◯◯「……」
伝えようとしたはずの言葉が喉元でつっかえて出てこない……
ヒノトさんが浮かべた苦しげな表情は少し怖いくらい真に迫っていた。
ヒノト「一度、振ったくせにどういうこと? 可哀想だから、優しくしてくれるの?」
◯◯「そんな……」
ヒノト「俺は……そんなことされたら、もう諦めてあげられないよ?」
◯◯「あっ」
いつも優しかったはずの彼が、強引に私の腕を引き寄せた。
思っていたよりもずっとたくましい彼の腕に、胸が音を立てる。
ヒノト「俺ね、実はそんなに気が長い方じゃないんだ。 君は優しいなんて言うけれど……」
低い声で囁かれて、むず痒いざわめきが背筋を走った。
けれど間近で見る彼の真剣な瞳に、心はときめきを覚える。
◯◯「私……」
ヒノト「しーっ……黙って」
唇に彼の人差し指が宛がわれる。
ヒノト「もう……優しいだけの俺じゃいられないから……」
そう告げた言葉を最後に、彼は私をその場から連れ去ったのだった…ー。