真琴「……なら僕は、ここで死ぬよ」
○○「真琴君……?」
僕の言葉を聞いた○○の顔がみるみるうちに青ざめていく。
真琴「復讐は僕の生きる意味そのもの。それをやめろって言うんだったら……。 僕にここで、死ねってことでしょ?」
○○「そんな……!」
すがるように僕を見つめる○○の表情が、たまらなく僕をそそる。
真琴「……くくっ! あはははっ! いいね、その顔。最高!」
○○「……!」
(ああ……いい。最高だ)
(その顔があれば……)
真琴「そうだなあ……。 君が代わりになってくれたら、復讐を止めてもいいかも」
○○「え……」
真琴「どうするの? ○○」
○○「えっ……」
(何だよその反応)
(僕の心を、ここまで揺さぶっておいてさ)
○○の戸惑った声に、少し苛立ちを覚えてしまう。
真琴「君が、こいつらの代わりに僕の生きる理由になってくれるのなら。 僕は復讐を止めてもいいよ」
けれど○○からは、いつまでたっても返答がない。
真琴「……そう、できないんだ。 できないなら……」
(多分……こうしたら君は首を縦に振るだろう?)
男「ひっ……!」
今度は上半身を捻じってやろうと、男の方を向いた時…―。
○○「ま……待って! わかった!!」
(……遅いんだから)
○○の声が聞こえて、僕は笑みをこぼした。
真琴「ありがとう! ○○なら、そう言ってくれると思ってた♪」
○○「でも……私、どうすれば……」
真琴「こういうことだよ♪」
僕の瞳が○○の体の自由を奪う。
彼女の体がびくんと揺れ、やがて僕の意のままに動くようになった。
真琴「さあ、帰ろうか……」
○○の表情は、さっきよりも一層苦しげに、怯えたように歪んでいる。
(やっぱり……たまらないな)
恍惚感が溢れ、僕の胸の高鳴りを大きくしていく。
真琴「いい顔してるね……大好きだよ、その顔」
この上ない高揚感に支配され、僕は満面の笑みを浮かべた…―。
…
……
○○と家に戻った、その後…―。
真琴「……愛して、くれないの?」
○○の体を支配しながら、ねだるように彼女に聞いてみる。
けれど彼女は戸惑うばかりで、その答えは返ってこなくて……
(違う。僕はもっと……)
真琴「なら……」
机に置いてあったナイフを手に取り、自分の首にあてがう。
○○「やめて……! お願い……!」
(そう……そうだ、その顔だよ!!)
真琴「……くくっ! あははは! かわいい顔!」
(君の苦しむ顔こそが、一番可愛い!!)
真琴「もっともっと、僕のために苦しんでよ!」
○○「……っ」
(? どうしてそんな顔するの?)
(哀しい顔なんて見たくないんだけどな)
なおも動揺を見せる彼女を見て、僕は泣きそうになってしまう。
真琴「復讐だけが……あいつらを殺すことだけが、僕の生きる理由だったんだよ。 でも○○は……僕の生きる理由になってくれるって言ったよね」
(ねえ、頷いて)
真琴「僕ね、嬉しかったんだよ。 だから……僕の前から、いなくならないでね?」
(ねえ、笑って?)
○○はゆっくりと頷いて、やがて笑みを浮かべてくれた。
真琴「うん、いい笑顔だ」
その笑顔に満足した僕は、虫籠の中の蝶を一斉に蜘蛛のいるガラス箱へと放つ。
真琴「僕にはもう君がいるから……こいつらは必要ない」
自由を喜び羽ばたいた蝶達が、次々に蜘蛛の餌食になっていく…―。
○○「……っ!」
(……最高にいいね)
目を伏せる○○の顔を見て、僕の全身に悦びが駆け巡る。
真琴「やっぱり君のその苦痛に歪む顔が……一番ぞくぞくする」
僕は見つけてしまった。
復讐しかないと思っていた僕にとっての、生きる理由を…―。
真琴「これからは、それだけを楽しみに生きるよ」
そう囁きかけ、○○を抱きしめる。
○○「……」
真琴「君が……好きだよ。 ずっと僕の傍にいて、僕を愛してよ」
言葉にするたびに、○○への想いが溢れ出す。
(君の可愛い顔が見たい)
(君のことを支配したい)
(君の全てが……欲しい)
真琴「そうでなければ、また復讐をしないといけない……。 父さんと母さんの代わりに僕をかわいがってくれた、あの人達に……」
(あいつらを滅茶苦茶にするためにずっと生きてきた。けど今は……)
ありったけの愛おしさを込めて、僕は彼女の名前を呼ぶ。
真琴「ね……○○? 僕、○○がいないと、死んじゃうよ……」
(僕が生きるために、苦しんで)
たとえば明日○○がいなくなったら、僕も、もういなくなる。
僕にとっての生きる希望を、壊さないように傷つけるにはどうしたらいいのか、
僕はそんなことを考え続けていた…―。
おわり