薄暗い曇り空の下、私は全力で街を駆け抜けた。
路地裏まで辿りつき、その場にしゃがみ込んでしまう。
(怖かった・・・・)
真琴君の残忍な表情を思い出し、恐怖がまた体を支配していく。
(でも・・・・)
ー----
真琴「かっわいー!お前、どこから来たの?」
真琴「お前はほんとにかわいいねー!」
ー----
動物達に向けられた、真琴君の優しい笑顔を思い出す。
(・・・・あの笑顔は、つくりものなんかじゃない)
(真琴君・・・・本当のあなたは、いったい・・・・)
その時・・・・ー。
??「昼間、真琴と一緒にいた女だな」
○○「・・・・!」
背中に冷たい何かが押し当てられ、低い声が背後から響く。
(銃・・・・?)
男「一緒に来てもらおう」
○○「やっ・・・・!」
(真琴君を襲った人達・・・・!?)
腕を掴まれ、近くに止めてある車に乗せられそうになった時・・・・ー。
真琴「僕が利用するつもりだったのに、何で捕まってるんだよ」
声のした方を見やると、真琴君が呆れた顔で立っていた。
男「真琴・・・・!何もするなよ、でないと、こいつを・・・・」
銃口が、私の頭に向けられる。
真琴「うん?撃てば?」
(・・・・!)
男「なっ・・・・」
平然と言う真琴君に、男は唖然としているようだった。
真琴「あっはは!面白い顔」
真琴君は、心底楽しいといった様子で笑っている。
男「ふざけるなよ・・・・俺は本気だ!」
○○「・・・・!」
銃口が頭に押しつけられ、恐怖で顔が青ざめていくのがわかる。
真琴「助けて欲しいなら、助けてって言えよ」
そんな私に、真琴君は何かを期待するような様子で言葉を放つ。
○○「助けて・・・・」
かすれる声で真琴君に助けを求めると・・・・
彼は満足そうに目を細めた。
男「何をごちゃごちゃと言ってるんだ!」
男が怒鳴り声をあげた、その時・・・・ー。
男「あっ・・・・?」
急に、銃を持つ男の腕が変な方向によじれた。
そして・・・・
男「・・・・ぁぁあ!」
腕から鈍い音が鳴り、私に突きつけられていた銃が地面に落ちる。
真琴「○○が苦しんだ顔は、僕のお気に入りなんだよ。 何でお前が、その顔をさせてる訳?」
真琴君がそう言って瞳を光らせると、今度は男の脚が変な音を立て始める。
真琴「あははは・・・・っ!」
○○「真琴君・・・・!もうやめて・・・・!」
思わず彼に向ってそう叫んでしまった。
真琴「は?君、さっき殺されかけてたんだよ?何で止めるの?」
真琴君の声に、怒りが宿る。
○○「それは・・・・」
真琴「こいつらは・・・・僕の全てを奪ったんだよ。 父さんも、母さんも・・・・僕の大切なものを、全部・・・・!」
真琴君の表情が、歪んでいく。
ー----
真琴「さっき僕らを襲った奴らは大統領の側近なんだけど、僕ら王族を狙ってるんだ」
ー----
真琴「そうだよ。僕の家族は、大統領制になった時に殺された」
(真琴君・・・・!)
微かにふるえる彼の肩を見つめる。
真琴「僕はこいつらを許さない! 父さん達を殺して、のうのうとでかい顔して生きてるこいつらを! 全員に、死ぬより辛い苦しみを与えてやるんだ・・・・あははははっ!!」
真琴君のその叫びには、怒り、苦しみ、悲しみ・・・・彼の全ての感情が込められているようだった。
悲痛な叫びに、私の胸が締めつけられる。
○○「・・・・!」
真琴君の瞳から、一筋の涙が流れ落ちていく。
○○「真琴君・・・・お願い・・・・!」
気がつくと、私は真琴君に駆け寄り、彼を抱きしめていた・・・・ー。