(なんて・・・・酷い・・・・)
蝶が糸に絡め取られていく、蜘蛛の巣から目をそらす。
真琴君に見据えられ、じっとりとした汗が額に浮かんだ。
真琴「・・・・」
薄く笑みを浮かべる真琴君が、まだ蝶がたくさん捕われている虫籠に視線を向けた。
籠の中の蝶は、自由を求めるように美しい羽を動かしている。
真琴「・・・・出たいってさ。君が出してあげなよ」
そう言って、真琴君は私を虫籠の方へ促す。
○○「・・・・嫌・・・」
首を横に振りながら、私は後ずさった。
真琴「そんなこと言わないで、ねっ♪」
真琴君は私の手を掴んで、虫籠の蓋に触れさせようとする。
○○「・・・・嫌っ!!」
思わずその手を乱暴に振り払ってしまった。
真琴君は一瞬、目を丸くしたけれど・・・・ー。
真琴「・・・・いいねその顔。跪かせたくなる」
彼はにやりと残忍な笑みを浮かべ、私の目を真っ直ぐに見つめる。
(え・・・・!!)
真琴君の目が怪しく光ったような気がすると・・・・
突然、体の自由が利かなくなってしまった。
真琴「あはははっ!!!」
○○「いったい・・・・あなたは・・・・」
真琴「すごいでしょ!父さんと母さんが死んだ時にね、この力に目覚めたんだ!」
○○「死ん・・・だ・・・・?」
真琴「そうだよ。僕の家族は、大統領制になった時に殺された。 側近の裏切りでね」
(・・・・!)
真琴「その裏切り者が、今の大統領ってわけ」
○○「そんな・・・・」
真琴「だからね・・・・僕は、この力であいつらに思い知らせてやりたいんだ。 苦しみに歪むあいつらの顔・・・・想像しただけで楽しいよね!あははっ!!」
○○「どうして、私を呼んだの・・・・?」
真琴「大統領制になってたかだか5年、国民は、まだ完全に王政を忘れたわけじゃない。 そんな時にトロイメアのお姫様が僕と一緒にいるところを見たら、国民はどう思うかな」
○○「・・・・!」
真琴「僕は、奴らから全てを取り上げたいんだよ。 簡単になんか楽にしてやらない。苦しめて苦しめて、取り上げてやる。 僕から全てを奪ったんだ。当然の報いでしょ?」
淡々と真琴君は話し続ける。
(利用・・・・するつもりだったんだ)
真琴「あっ!いいねその顔!・・・・僕好みだ」
真琴君は嬉しそうに、私の顔を覗き込む。
真琴「まあ、悪いようにはしないからさ!僕の復讐に、ちょっと協力してよ」
言葉がどうしても出てこなくて、真琴君を見つめることしかできない。
真琴「何か言ってくれないと、わかんないなあ~」
真琴君は、楽しそうにつぶやいた。
真琴「君、いいね・・・・」
私の首筋が真琴君の指でなぞられ、背にぞくりとした感覚が走る。
○○「っ・・・・」
真琴「僕、嫌だと言ってる相手を屈服させるのが、大好きだからさ」
真琴君の瞳がまた怪しく輝き出すが・・・・
○○「・・・・っ!」
私は目をぎゅっとつむり、唇を噛んだ。
鈍い痛みが走ると同時に、体がふっと自由になるのを感じる。
真琴「・・・・!」
その瞬間、私は真琴君の部屋から飛び出した・・・ー。