それから・・・・ー。
小犬の飼い主も無事に見つかって、真琴君の家に向かっていた。
真琴「かわいかったなー!あの子犬。僕も飼いたくなっちゃった」
真琴君の可愛い声が、耳に心地よく響く。
○○「そうだね」
真琴「あっでも駄目だな。うちにはジャンがいるから」
○○「ジャン?」
真琴「うん!○○にも紹介するよ!楽しみにしてて!」
そんなやり取りをしながら、街を進んでいくと・・・・ー。
警備員「悪いね、今日ここは通行止めなんだ」
私達が進もうとしていた先に、警察のような制服を着た大柄の男性が立ちはだかった。
警備員「もうすぐ大統領の凱旋パレードが始まるからね。知らなかったかい?」
(大統領・・・・?)
真琴「この国は、5年前に王制から大統領制へ移行したんだよ」
私の疑問に答えるように、真琴君が説明を始める。
真琴「僕の父さんは前の国王。だから僕も今は街で暮らしてるんだ」
(そんなことが・・・・あったんだ)
やがて、街の人の大きな歓声と共に、パレードが開始された。
リムジンのような豪華な車の窓から、ごてごてと着飾った男性が聴衆に手を振っている。
(あれが・・・・大統領?)
○○「真琴君、あの人が・・・・?」
真琴君に尋ねようと振り返ると・・・・ー。
○○「・・・・!」
彼を見て、私は凍りついてしまう。
真琴「・・・・」
パレードを見つめる彼の瞳は、恐ろしいほどに冷たく歪んでいた・・・・
真琴「さ、行こっか!」
○○「う・・・・うん・・・・」
人々の歓声を背に、私達はその場を離れた。
真琴「この道を抜けたら、僕の家の前まで出るから!」
パレードを迂回した道を歩きながら、私はさっきの真琴君の冷たい瞳を思い出していた。
真琴「この国は、5年前に王制から大統領制へ移行したんだよ。 僕の父さんは前の国王。だから僕は今も街で暮らしてるんだ」
(何か・・・・あったのかな)
○○「真琴君、もしかして大統領と、何かあった・・・・?」
真琴「・・・・知りたい?」
真琴君が、私に微笑みかけたその時・・・・
○○「・・・・!」
路地裏から、黒いスーツを着た男達が複数人現れ、私達を取り囲んだ。
真琴「・・・・」
うろたえる私に構わず、真琴君は男達に笑顔を向ける。
(・・・・!)
男達は、いきなり私達に襲いかかってきて・・・・ー。
○○「真琴君・・・・っ」
思わず声を上げると、真琴君は私の手をそっと握ってくれた。
真琴「・・・・」
真琴君が目を細めて男達を見回すと、突然、男達は地面にはいつくばるように倒れ込んだ。
(え・・・・?)
男「う・・・・」
苦しそうに呻く男に真琴君が近づき、そして・・・・ー。
真琴「本当に、何度やられたらわかるの?学習しないなあ・・・・」
倒れている男の髪を掴み、顔を持ちあげる。
○○「ま・・・・真琴君?」
真琴「・・・・ごめんごめん○○、さ、行こう!」
男を放し、真琴君は何もなかったかのようにさっさと歩き出してしまう。
(何が、どうなってるの・・・・?)
突然の出来事に、私は戸惑うことしかできない。
真琴君が男に向けた冷徹な声が、私の耳に張りついていた・・・・ー。