○○が城を出る姿を見届けた後…ー。
僕は名残惜しい気持ちを振り切って、自室に戻っていた。
カストル「ありがとう……」
口からこぼれ出た、感謝の言葉。
それは、ポルックスへ向けられたものだった。
カストル「ねえ、聞こえてるかな?」
僕の中にいるポルックスに呼びかける。
(なんでも君に押しつけてしまっていたけれど)
(僕も……強くなるよ)
彼女に目覚めさせてもらってから、瞬く間に日々は過ぎて…ー。
○○との出会いが、僕の気持ちを大きく変えた。
去り際に、彼女が伝えてくれた言葉を思い出す。
ー----
○○「カストルさん、それは違います!」
カストル「○○?」
○○「ポルックスさんは、カストルさんのことを心配していました」
ー----
(僕は、ずっとポルックスに対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった)
(自分のことを怒ってるんじゃないかって……けど)
カストル「今は……違う。ポルックスは僕の一部で……僕達は、二人でひとつだ」
手のひらをじっと見つめて、静かにそれを握りしめる。
(感じる……確かに、僕の中にポルックスがいることを)
(いつか、彼とひとつになれたら……)
(いや、必ず迎えるって決めたんだ)
決意を胸に顔を上げると、風に揺れるカーテンが目に入った。
(あ……)
バルコニーまで歩いて、外を眺める。
そこに、もう彼女の姿はないけれど……
カストル「○○に、胸を張って再会したい」
言葉として声に出してみると、胸がじんわりと温かくなった。
(ポルックスが答えてくれているのかな)
(……頑張らないとね)
その時、風がそよぎ、ふわりと頬を撫でた。
僕は、彼女と過ごした数時間前のことを思い出す…ー。
カストル「ありがとう、○○。僕に大切なことを気付かせてくれて……」
○○「カ、カストル……さん……」
カストル「ただ、カストルと、そう呼んで欲しい……」
○○「……カストル……」
(僕は嫉妬していたんだ)
(自分の知らない、ポルックスが彼女と会っていた時間に……)
(○○を、独り占めしたいなんて)
子どもじみた独占欲に、僕は思わず苦笑を漏らす。
(ポルックスとひとつになれたら、独り占めではなくなるのかな?)
あの時腕に抱いた彼女は、温かくて、優しくて……
(いつまでも抱きしめていたかったけれど)
(でも、これでいいんだ)
柔らかな日差しがまぶしくて、僕は目を細める。
(不思議だ……)
(こんなにも前向きになれたのはいつぶりだろう)
カストル「ありがとう……」
今度はポルックスへ向けた言葉じゃなくて、○○に向けた感謝の言葉を紡ぐ。
(僕と、ポルックスから……君へ)
(強くなるから)
今はこの場にいない彼女へ向けて、僕は約束を結んだ…ー。
おわり。