星の国ジェミオ・影の月…ー。
ユメクイに夢を奪われてしまった王子をどうか助けて欲しいと頼まれ、
私は、ジェミオの国の王城を訪れていた。
国王「どうか、カストルを頼む。トロイメアの姫よ」
王妃「私からも……どうか、お願いします」
城の人々が、祈るように見守る中…ー。
星空輝く中庭で、指輪から漏れ出た光が闇を照らした。
カストル「……? 父上……母上? 僕は一体…ー」
目覚めたばかりの王子は、困惑した様子で辺りを見回す。
(綺麗な瞳……)
薄い青色と、かすかに茶色が織り交ざった不思議なその瞳の色は、
見る角度によって色と輝きを変える、美しい万華鏡のようだった。
国王「おお、カストルっ!!」
王妃「カストルなのですね!」
緊張感に包まれていた庭に、歓声が沸き上り、次第に人々の安堵が広がっていく。
(無事に目覚めてくれてよかった)
ほっと息を吐いていた時…一。
カストル「君は……? 君が僕を……」
カストル王子の瞳が、私に向けられた。
◯◯「はい、◯◯と言います」
カストル「素敵な響きの名前だ」
王子が柔らかに目を細めると、瞳の色が美しく滲む。
(やっぱり、綺麗な瞳……)
思わず言葉を忘れていると…ー。
カストル「ありがとう……美しい人、僕を眠りから起こしてくれて」
◯◯「……!」
不意に彼のしなやかな手が、私の指をふわりと包み、胸が小さく音を立てた。
その時…ー。
カストル「……っ!」
◯◯「!」
突然、カストル王子がぐらりと体勢を崩し、地面に倒れ込みそうになってしまう。
◯◯「カストル王子! 大丈夫ですか!?」
カストル「……」
(え……)
その一瞬…ー。
カストル王子の瞳の色が、ぎらりと鋭い刃物のように光った気がした。
けれど……
国王「カストル! !」
カストル「……大丈夫です。目覚めたばかりだからでしょうか……。 ◯◯様、驚かせて申し訳ありません」
支えようと、思わず彼の両腕に触れた私の手を取って、彼は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
その瞳は、先ほど垣間見たあの鋭さはもうなく、元通り穏やかで美しいカストル王子の瞳だった。
(気のせい……だったのかな)
国王「とにかく医師を呼ぼう! カストル、すぐに部屋で休みなさい」
カストル「ご心配には及びません、父上」
そう言ってカストル王子が、力なく微笑む。
(カストル王子……本当に大丈夫なのかな)
強くなってきた夜風に、中庭の草花が不安げに揺れていた…ー。