ようやくチームがまとまり、今日はいよいよ祭りの日本番……
そして、今日は一年最後の日…―。
カノエ「はっ……!それそれそれそれっ!!」
激しい太鼓の音に合わせて、カノエさん達のチームは圧倒されるくらいの見事な演舞を披露していく。
観光客も国の人も、誰もが皆、その芸術作品のような統一された動きに歓声をあげた。
(すごい……時間がなかったのに、ここまで合わせられるなんて)
それだけ気持ちが一つにまとまっているのだと思うと、感動して胸が熱くなっていく。
カノエ「はーーっ、はっ!」
まるで時間が止まったかのようにぴたりと制止してポーズを決め、演舞は終わった。
観客1「素晴らしい!」
観客2「最高だ!」
観客達が立ち上がり、盛大な拍手が湧き起こる。
私も立ち上がって、手が痛くなるほどの拍手を送った。
(素敵……カノエさん……)
額に滲んだ汗を腕で拭うカノエさんの表情は、この上なく満足そうで……
(本当に良かった)
胸の熱さは、いつまでも消えることはなかった…―。
…
……
そして時は新年を迎え、あちこちでお祭り騒ぎの飲み会が開かれる。
カノエさんのチームも、お互いを労うように皆でお酒を酌み交わしていた。
(あれ?カノエさんがいない……?)
ついさっきまで一緒に新年のお祝いをしていたのに、姿がどこにも見えない。
周りを見回すと、人混みから少し離れたところにカノエさんの姿を見つけた。
○○「カノエさん!」
考えるより先に体が動いていて、カノエさんの隣へと移動する。
カノエ「○○か……楽しんでるか?」
顔を真っ赤にして、ふらふらとした足取りで……
○○「大丈夫ですか?座った方がいいんじゃ……」
(カノエさん、酔ってる……?)
そう思った矢先、カノエさんの逞しい体が大きく揺らいだ。
○○「……っ!」
慌てて支えようとしても、彼の重みで耐えきれず一緒にしゃがみ込んでしまう。
カノエ「う……」
○○「本当に大丈夫ですか?今、お水を…―」
カノエ「……座るよりも、横になった方がいいみたいだ」
○○「え…―」
隣に座った彼の体が、ずるりと滑り落ちたかと思うと…―。
○○「!!」
カノエ「……こうしてる方が……楽だ」
カノエさんの頭が私の膝の上に乗せられていた。
(これって、膝枕……だよね)
カノエ「ふーっ、落ち着くな……」
(カノエさん……酔ってるせいか、いつもと違う……)
凛々しく皆の先頭に立っていたカノエさんが、今はまるで子どものようで……
(なんだか可愛い)
そんな彼の様子に、思わず頬を綻ばせる。
カノエ「はあ……」
すると彼は苦しそうに吐息を吐いた後、私の手を握りしめた。
○○「……っ」
彼の手の熱さを感じて、胸の鼓動がいっそう速く鳴り響く。
(聞こえない……よね)
カノエ「今回、成功したのは……お前のおかげだ」
○○「え……っ」
カノエ「一人で練習してこれたのも、お前が見守ってくれているという思いが支えだった」
○○「それは……カノエさんの実力です」
カノエ「それに……お前がああ言ってくれて嬉しかった。 見たいって」
○○「あ…―」
握りしめた手に、ぐっと力が込められる。
カノエ「頑張れたのには理由があったんだ。それがお前だ。だから……これからも傍にいろ」
○○「……っ」
言い方はぶっきらぼうだけど、琥珀の瞳の輝きに切なさを感じて、胸が締めつけられる。
カノエ「返事は?」
頬に熱が集まるのを感じながら、そっと頷いた。
それを満足げに見届けると、カノエさんは柔らかい表情で微笑む。
(この笑顔をいつも……誰よりも傍で見たい……)
膝にかかる重みに愛しさを感じた時、私もこの人が好きなのだと改めて気づいた。
カノエ「声で言えよ」
深く息を吸って、小さく唇を開く。
姫「はい……。 ずっと傍にいてもいいんですか?」
カノエ「そんなもの……いいに決まってる」
彼の手が伸ばされ、私の頬に軽く触れる。
その熱い手の心地に頭の中を熱くさせながら、そっと目を閉じる。
カノエ「ああ……いい年になりそうだ」
彼のつぶやきが、これからの新しい、幸せな日々を予感させた…―。
おわり