第2話 よい時期に……

カノエさんと城に辿りつくまでの間、たくさんの人達から明るい声をかけられた。

(最初は近寄りがたい雰囲気だなって思ってたけど……皆から慕われてるんだ)

街の人達とやり取りをするカノエさんの様子を見て、私は、硬い表情の向こうにある彼の人柄を思った…―。

木々でできた廊下は、ほのかに檜の匂いが漂っている。

歩くたびに、まるで鶯の鳴き声のような音がした。

(かわいい音……)

その音に心弾ませながら足を進めていくと……

カノエ「さっきは……いきなり奴らに囲まれて怖かっただろ、悪いな」

急に前を歩いていたカノエさんが私の方に向き直って、ばつが悪そうに後頭部を掻く。

○○「大丈夫です。むしろ賑やかで楽しいですし……皆さん、いい人達ですね」

笑ってそう返すと、カノエさんは整った眉を少し上げ、驚いたように目を見開いた。

濃い琥珀色の瞳に、私の微笑みが映っている。

カノエ「怖くなかったのかよ?」

○○「はい」

少し驚いた顔をしていたカノエさんが、ふっと頬を綻ばせた。

カノエ「へえ……お前、変わってるって言われるだろう?」

(あ……こんな風に笑うんだ)

初めて見る表情の柔らかさにどきっとして、胸にそっと手を当てる。

カノエ「そうだ。せっかくだから、街を見ていくといい。 それにしても、お前、今年この国に来るなんて運がいいな」

(運がいい……?どういうことなんだろう?)

○○「何かあるんですか?」

私が首を傾げると、カノエさんは面白そうに目を細めた。

カノエ「それはまだ言えない。見ればわかることだしな」

○○「ドキドキします」

プレゼントを開ける前のような、ドキドキする待ち遠しさを感じて……

○○「なんだか楽しみが増えたように思えます」

カノエ「いい考え方だな」

カノエさんが、嬉しそうに目を細めた。

カノエ「明日、街を案内してやるよ。それまであれこれ想像して楽しみにしておくといい」

○○「はい。そうします」

カノエ「いいことは、とっておくと喜びが倍増するからな」

○○「私も、そう思います」

(早く明日になって欲しい……)

カノエさんの瞳には、力強い光が宿っている。

その表情を見るだけで、胸が期待でいっぱいになっていった…―。

 

 

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