月7話 人間の体

それから私達は、毎日のように海辺で朝から晩まで、ふたりのおしゃべりを楽しんでいた。

サラサ「また……あっという間に時間が過ぎちゃったね。 明日も、会えるよね?」

〇〇「うん」

そして今日もまた、私はサラサくんと楽しい時間を過ごしている。

だけど…ー。

〇〇「あ、あの……サラサくん?」

サラサ「え?なに?」

〇〇「そんなに触られると……」

サラサくんはここ最近、遠慮なく私の体のあちこちを触ってくる。

(嫌じゃないんだけど……)

サラサくんに触れられると、嬉しいだけではなくて、恥ずかしい気持ちが押し寄せて、私の頬はどんどんと熱を持っていってしまう。

サラサ「あ……ここは触っちゃだめだった?」

サラサくんのひんやりとした手が、私の頬にそっと触れる。

〇〇「だ……駄目ってことはないんだけど……」

すると…ー。

私が拒否をしなかったからか、その手が少しずつ下へとおりてきた。

(え……!)

彼の手が、私の首筋を優しく撫でて……

(くすぐったい……)

サラサくんが私の顔を覗き込んでくるけれど、私は彼と視線を合わせることができなかった。

サラサ「そうだ、人間って……泳げるんだよね?」

〇〇「お……泳げるけど、中には泳ぐのが苦手な人がいて……」

返事を聞いているのかいないのか、今度は私のふくらはぎに手を添える。

〇〇「!」

サラサ「温かい……本当に人間は温かいね。なんだか触っていると気持ちがいい」

〇〇「そ、そう……?」

サラサ「あ……ここが一番温かいかも」

そう言って、サラサくんは私の内腿に触れた。

〇〇「っ……」

思わずその手を振り払ってしまうと、サラサくんが驚きに目を丸くした。

サラサ「え?……だ、大丈夫?」

〇〇「……ご、ごめん」

謝ることしかできずに、赤くなる頬を手で押さえた。

サラサ「人間の体は、温かいだけじゃなくて、すごくすべすべしてる……。 人魚は鱗があるから、こんな感触じゃないんだ。 ごめん、驚かせないように気を付けるから、もう一度……」

サラサくんは私の足をまじまじと見つめながら、上から下にゆっくりと撫でる。

サラサ「〇〇、足くすぐったいの?」

〇〇「ううん、そういうことじゃなくて……」

サラサくんは口ごもる私を見て、不思議そうに見つめている。

(天然なのか……わざとなのか……)

そんなことを考えていると、不意に手が握られる。

サラサ「〇〇も僕の体触ってみて」

〇〇「え…ー」

その言葉にドキドキしていると、サラサくんは私の手を握り、自分の胸にそっと当てた。

〇〇「あ……」

少し速い、彼の動季が手のひらに伝わってくる。

(サラサくんも、ドキドキ……してる?)

サラサくんの胸の鼓動を感じて、その目を見つめると、優しい微笑が返ってくるのだった…ー。

 

 

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