〇〇「また明日、会えますか?」
私の問いかけに、サラサくんは笑顔で頷いてくれた…-。
それからも私達は、毎日のように海辺で朝から晩まで、二人でおしゃべりを楽しんでいた。
そして今日も…-。
朝食を食べ終えた後、私は急いであの海岸へと向かった。
〇〇「今日も綺麗……」
鮮やかな青い海に太陽の光が反射して、きらきらと輝いている。
天気も晴れ晴れとしていて、気分が軽やかに弾む。
(少し早かったかな……)
昨日サラサくんに会ったのはお昼過ぎ。
朝食を食べてすぐ海岸に向かったことを考えると、今はお昼にほど遠い時間だということがわかる。
(ゆっくり海を眺めながら、サラサくんを待っていよう)
穏やかな気持ちで、昨日サラサくんと過ごした場所へと向かう。
すると…-。
(え……)
サラサくんはすでにその場にいて、私が歩いてくるのを見ると嬉しそうに微笑んだ。
サラサ「おはよう」
〇〇「おはようございます! 待たせてしまいましたか……?」
サラサ「大丈夫、僕も今来たところだよ」
そう言って、サラサくんは穏やかな表情を浮かべる。
(サラサくんの笑顔って、やっぱりすごく綺麗……)
そんなことを思いながら、昨日と同じように岩場へと腰を下ろし、サラサくんと目線を合わせた。
そしてまた、お互いの話に耳を傾ける。
〇〇「人魚の国って、綺麗なところなんだろうなぁ……」
サラサ「うん、とても綺麗なところだよ。 〇〇を連れて行きたいけど、王宮は海の奥深くにあるから、きっと息が続かないと思うよ」
私の知らない世界に住むサラサくんの話は、とても興味深かった。
〇〇「うーん、酸素ボンベがあれば行けるかな?」
サラサ「酸素ボンベ?」
〇〇「空気が詰まった入れ物に、ホースがついてて……」
サラサ「それを口にくわえるの? ……なんだか、大変そうだな」
サラサくんは、私の話を興味津々で聞いてくれた。
たった数日だけど、私達の距離はだいぶ縮まっているように思えた。
(サラサくんも……言葉数が多くなった気がする)
そう思うと嬉しくて、私の顔もほころぶのだった…-。
…
……
今日も時間を忘れて話し込んでいると、既に太陽が沈もうとしていた。
サラサ「もう……こんな時間」
〇〇「一日が、なんだか早いですね」
サラサ「……」
サラサくんが、難しい顔をしてぎゅっと拳を握りしめた。
サラサ「ねえ、〇〇……おまえはいつまでここにいるの?」
〇〇「え…-」
(それは……)
サラサ「僕は、もっとおまえの話が聞きたい。 ずっといられるの?」
〇〇「……」
(こうして、サラサくんに会いに来られるのは、あとどれくらいだろう……)
(ずっとこうして海辺にいるわけにいかない……でも、私は人間だから彼の国に行くこともできない)
不意に、寂しさに襲われる。
(もっと……私も、一緒にいたいけど)
そんなことを思いながら、彼の質問に答えかねていると…-。
サラサ「そうだ……海底の魔女がいる……」
サラサくんの独り言のようなつぶやきに、思わず顔を上げた。
〇〇「海底の魔女って?」
サラサ「なんでもないよ……ただ……。 〇〇。僕は……僕は、〇〇と一緒に……」
〇〇「え?」
サラサくんは、そこで言葉を飲み込んだ。
(サラサくん……何を言おうとしたんだろう)
彼の思いつめたような表情を見て、胸騒ぎがするけれど…-。
サラサ「じゃあ……また明日」
〇〇「うん、また明日」
ぽつりとつぶやいて、彼は海へと帰っていった。
(大丈夫かな……様子がおかしかったような……)
ざわめく胸を抑えながら、私は一人その場にたたずんでいた…-。