スラム街での演説が大成功を収めた後…―。
〇〇「っ……エドモント、さん?」
俺は〇〇をひと気のない路地裏へと引っ張り込んでいた。
エドモント「スラムにも、いい場所があったようだね。ここなら、誰にも見られない……」
(それに何より……もう、城に戻るまで我慢できそうにない)
〇〇「っ……!」
いつもとは違う俺の様子を見て、彼女は困惑したような表情を浮かべる。
そんな彼女の腰を、俺は力強く引き寄せた。
エドモント「今日まで我慢していたんだよ。 王子らしく……それに、自分らしくなれてから、君とのことはきちんとしたかったから。 何度……君が愛しいと、言おうとしたことか」
〇〇「……!」
エドモント「今なら、言ってもいい気がするんだ。 君が好きだ。君が、欲しいって……」
〇〇「あ……」
熱を帯びた目で彼女をじっと見つめながら、顔を近づける。
そうして俺は、そっとまつ毛を伏せ……
エドモント「好きだよ……」
吐息もかかる距離で想いのすべてを込めた一言を囁いた後、彼女と唇を重ね合わせた。
(〇〇……)
重ねた唇の感触に胸が締めつけられ、体の熱が一気に高まる。
すると、少しの間の後…―。
(……!)
〇〇が、すがるように俺の胸へとしがみついてきた。
(本当にかわいいな……)
(そんなふうにされたら俺、もう…―)
〇〇「ん……っ」
愛しさを抑えきれず、彼女の腰をさらにぐっと引き寄せて唇の重なりを深くする。
(……っ)
〇〇を深く感じれば感じるほどに、頭の芯が蕩けそうになった。
エドモント「〇〇……」
切なそうに息を吐く〇〇をそっと解放した後、とびきり優しく甘い声音で名前を呼ぶ。
エドモント「……駄目だった?」
〇〇「そ、れは……」
エドモント「ずっと、君にこうして触れたかったんだ。抱き寄せて体を触れ合わせて、口づけて……。 これまで伝えられなかった分、君が愛しいと何度でも伝えたいんだ」
目の前の彼女に、俺は切なげに訴える。
すると……
〇〇「……私、も……」
エドモント「ん? なあに?」
懸命に言葉を紡ごうとする彼女がいじらしくて、つい、あやすように声をかけてしまう。
〇〇「私も……好きです。エドモントさんのこと……」
〇〇の言葉に蕩けるような喜びを感じ、自然と表情が緩んでしまう。
(……これほどまでに身も心も満たされるような幸せは、生まれて初めてかもしれない)
そうして俺は、未だ緩んだ表情のまま……
体中を満たす熱と喜びを伝えるかのように、彼女を強く掻き抱いた。
エドモント「ありがとう、〇〇。じゃあ……。 もう一度……」
〇〇「……はい」
再び、彼女の唇に甘く情熱的なキスの雨を降らす。
けれど……
(……足りない……)
つい先ほどまであんなにも満たされていたのに、閉じ込めていた想いが後から後から溢れ出して自分でも驚くほど貪欲に彼女を求めてしまう。
(もっともっと、君の熱を感じて……)
(俺の熱を、君に伝えたい)
そんな身も心も焦がしてしまいそうなほどの想いに、〇〇は……
俺が求めるがままに身を委ね、応えてくれたのだった…―。
おわり。