大臣と、見たことのない商人風の男の密談に、青ざめた。
(どうしよう……エドモントさんに知らせる?ううん、それとも……)
○○「っ……!?」
あまりに動揺していたせいで、背中をどこかにぶつけ、声を上げそうになった時……
??「静かに」
後ろから抱きしめるようにして、口元を塞がれた。
心臓が大きな音を立てる。
○○「んっ……」
エドモント「黙って」
(エドモントさん?)
平静さを失っていたせいか、一時、誰だか分からず暴れそうになってしまった。
(で、でも、どうしてエドモントさんがここに……)
見れば、エドモントさんは険しい表情で、大臣の密談に耳を澄ましている。
二人、密着したまま息をひそめ……それからしばらくして、大臣達は立ち去った。
エドモント「ごめんね、急に手荒な真似をしてしまって」
○○「いえ、助かりました」
エドモントさんは、完全に大臣達が立ち去ったのを確認すると、そっと私を解放してくれた。
エドモント「しかし……どうもおかしいと思って、大臣をつけてみれば。 何かあるとは思っていたけれど、こういうことだったのか……」
エドモントさんは、沈痛な面持ちで唇を白くなるほどにきつく噛み締めた。
エドモント「王族の……しかも、浅はかな私欲のために……あそこの人達を苦しめてはいけない。 そんなこと、あってはならない。 全て、俺達がもたらしたことだ。俺が、どうにかしないと」
強い光が、その瞳に宿る。
エドモントさんは、これまでに見たことがないほど、揺るぎない激しさを孕んだ表情を見せた。
エドモント「答えを出すのが、遅すぎたくらいだ」
○○「エドモントさん……私……もし、私に何かお手伝いできることがあるなら。 どうか、何でも言ってください。エドモントさんの力になれればうれしいです」
エドモント「ありがとう、○○。 君が味方でいてくれると思うだけで、俺はがんばれるよ」
○○「エドモントさん……」
エドモント「大丈夫だよ、○○。 やっと決心は固まった。俺はもう、悩んだりもしないから」
エドモントさんが、優しい手つきで私の髪に触れながら言ってくれる。
(エドモントさん……凛々しくて、優しくて……)
そんな彼に、心引かれずにはいられなかった。
彼のまなざしもまた、私をそんな目で見てくれているようで……
エドモント「ありがとう、俺の心の支えになってくれて……」
潔く美しい笑みがゆっくりと、近づいてくる。
それからふわりと優しく、触れるだけの口づけを頬に届けてくれた。
エドモント「もう大丈夫だ。 それに、王子としてもやるべきことを果たさないといけない」
優しさの上に宿った強さは、まさに王子に相応しく思えたのだった…-。