真冬にも関わらず寒さを感じない彼の庭園で・・・・ー。
サンタクロースを模したドレスに着替えた私は、帽子屋さんに一つだけ問いかけた。
○○「帽子屋さんは、いったい私をどうしたいんですか?」
マッドハッター「・・・・」
不思議な笑みを浮かべたまま、彼は私の腰を抱き寄せて・・・・
○○「・・・・っ」
ゆっくりと私の頬を、顎を、そして唇を指の腹でなぞった。
マッドハッター「考えは私なりにありましたが・・・・お気づきになりませんでしたか?」
○○「・・・・?」
言葉の意味が掴めず眉を寄せると、彼はおかしそうに笑い出す。
マッドハッター「はは・・・・! いや失礼。これまでのことを思い出して、自分のことが滑稽に思えてきたもので」
○○「滑稽・・・・?」
首を傾げる私に、帽子屋さんの流れるような視線が注がれた。
あまりにも魅惑的なその眼差しに、息を呑んでしまう。
マッドハッター「『クリスマス』を君と・・・・けれどそんなこと私にできるはずがなかったんです。 だって私は『クリスマス』を知らないのだから」
小さく肩をすくめる帽子屋さんの視線は、まだ私を捉えたまま・・・・
マッドハッター「しかし、最後に私は辿り着きました」
深い色をした瞳がゆっくりと細められて、彼は愛おしそうに私の髪を梳く。
マッドハッター「君のような・・・・可愛らしいサンタに出会えた」
ふと私に触れた指先の動きが止まり、彼は私の背中に回した腕に力を入れた。
さらに彼に抱き寄せられて、顔は唇が触れ合いそうな距離になる。
○○「帽子屋さん・・・・」
鼓動が胸の奥で高鳴り始め・・・・
大人びた彼の唇が私を誘うようにゆるく開かれる。
マッドハッター「それでは可愛いサンタクロース、私と共にワンダーメアへプレゼントを配りに行きましょうか?」
○○「えっ、プレゼント!?」
その時、彼の指先が渇いた音を鳴らした。
一体どういう仕掛けなのか、パーティ会場のテーブルの上に忽然と大小さまざまな大きさのプレゼントが大量に現れた。
○○「今から私と帽子屋さんが・・・・?」
マッドハッター「はい。このワンダーメアで初めてのサンタクロースになろうというのです。 ですが、その前に・・・・」
彼は私の耳元でそう低く囁く。
甘さを帯びた声に私の背中に震えが走り、私は思わず目をつむった。
聞いたこともない、体の深い場所に響くような声・・・・
息を整えて目を開けば・・・・ー。
○○「あ・・・・」
私の目の前にはどこか表情の読めない帽子屋さんの顔があった。
伏し目がちに細められた目は、私の唇を見つめている。
爪先まで綺麗に整えられた指先が、そっと私の下唇をなぞって・・・・
マッドハッター「して、可愛いサンタクロース、君は私に何をプレゼントしてくれるのでしょうか?」
○○「え、そんな私・・・・」
マッドハッター「おや、サンタともあろう者が人々に渡すプレゼントをお忘れとは! なんと嘆かわしく、そして寂しいことでしょう・・・・」
彼はずるい大人がするやり方で、わざとらしく悲しむ。
○○「あの、ごめんなさい・・・・今度用意しますから」
マッドハッター「しかしクリスマスパーティは本日一日限りなのですよ? はて、これはつまり・・・・」
彼の顔がぐっと私に近づく。
マッドハッター「君自身がプレゼントになるしかないようですね・・・・?」
○○「あ・・・・っ」
その瞬間、私の体はプレゼントでいっぱいになったテーブルの上に押し倒された。
淡い吐息が私の首筋をくすぐり、その度に私の背中には先ほど感じた言いようのない震えが駆け上がる。
マッドハッター「○○嬢・・・・私の可愛いリトルプリンセス・・・・」
○○「っ、だめですっ、帽子屋さ、ん・・・・」
声を上げる私の唇を彼が塞ぐ。
深く重なって何も考えられなくなるような口づけに、私の意識は徐々に彼の掌の中へ落ちていく・・・・ー。
マッドハッター「本当に可愛らしいお嬢さんだ・・・・」
そう言って私の唇を解放して、彼は次に私の首筋へ赤い印を降らした。
それは空から舞い落ちる淡い粉雪のように・・・・
私の心をゆっくりと甘くとかしていくのだった・・・・ー。
おわり