帽子屋さんの目に適うドレスは見つからないまま、結局私達は彼の営む店へと戻ってきた。
しかし彼はその時、店の出入り口ではたと立ち止まった。
マッドハッター「・・・・そうです! 私はなんて愚かなことを。 クリスマスに仕立てるべきドレスなど、このワンダーメアで見つかるわけがなかったのです!」
○○
「帽子屋さん?」
不思議に思い、私は立ち止まった彼の服の裾を掴む。
すると彼は随分と上機嫌で私を振り返った。
マッドハッター「失礼しました、お嬢さん。本日はここでお別れとしましょう。 また後日、準備が整いましたら君に招待状を送りますから。 その時はきっと素敵なクリスマスにご招待しますよ?」
○○「あ・・・・っ」
彼は約束だと、私の手の甲にキスを落とす。
流麗な仕草と、不意に感じた微かな熱が私の胸を鳴らした。
マッドハッター「それでは・・・・」
夕暮れが近づき、マッドネスの街の空気が一段と冷たくなる。
そんな中で、私は足早に店に入る帽子屋さんの背をしばらく眺めていた。
こうして私は数日の間、彼からの連絡を待つことになったのだった・・・・ー。