第4話 ウィンター・デート

雪がはらはらと舞う中、人々はどこか急ぎ足で街を行き交っている・・・・ー。

そんなマッドネスを回り、その後も帽子屋さんは私に様々なドレスを見立ててくれた。

しかし一向に彼の納得するものは見つからない。

マッドハッター「そういえば、クリスマスをイメージして君に帽子を仕立てるのなら、何の飾りにしましょう? 石か、それとも花か・・・・どうでしょう?」

○○「花でしょうか?」

マッドハッター「なるほど、しかし答えは君次第です」

どこか楽しそうに、帽子屋さんはハットを目深に被り直した。

マッドハッター「片方だけではクリスマスカラーにはなりませんから」

そんなことを話しながら、何軒目かの店を出た時だった。

○○「あれは?」

大通りの脇で小さなワゴンから湯気が上がっているのが見えた。

マッドハッター「おや、マローネですか」

○○「マローネ?」

マッドハッター「焼き栗のことです。こんな季節に珍しい。一つ試してみましょうか?」

彼が声をかければ、三角に折ったお洒落な包装紙に、

熱々の焼き栗を入れて店員が手渡してくれる。

マッドハッター「熱いですから気をつけて?」

○○「はい、あっ・・・・本当に、・・・・熱っ!」

一粒口に放り込んで白い息を吐き出す。

マッドハッター「ふふ・・・・可愛らしい方だ。私にも一ついただけますか?」

包み紙ごと差し出すと、彼は困ったように目をすがめて・・・・ー。

マッドハッター「そうではなく、君の手で」

○○「え!?」

マッドハッター「・・・・」

帽子屋さんの涼しげな視線が、私に注がれている。

○○「・・・・どうぞ」

丸い栗を一つ摘まんで彼の口元に運ぶと、柔らかな唇が指先に触れた。

マッドハッター「・・・・うん、悪くない味だ」

小さく頷いて、彼は私に微笑んだ。

こうして私達はその後も冬のメゾン・マッドネスの街を回った。

けれど、やっぱり帽子屋さんは時折、私に不思議な質問を投げかける。

マッドハッター「さてと、ここで私が昨晩見た夢の話をしましょう」

○○「どんな夢ですか?」

マッドハッター「百獣の王と小鳥の話です。あれは本当に不思議な夢でした・・・・」

彼は意味深に笑って、夢の詳細を話してくれる。

それは死に瀕したライオンと、その背で美しく歌うナイチンゲールの少し寂しい話だった。

マッドハッター「私は大変胸を打たれたのですが・・・・君は、私がどちらに感情移入したと思います?」

出題意図の掴めない問いかけに戸惑いながら答える。

○○「ナイチンゲールでしょうか?」

マッドハッター「おや・・・・そう思いますか?」

クスリと笑い、帽子屋さんは私の肩に手を回した。

(それなら・・・・)

○○「ライオンでしょうか?」

マッドハッター「ふふ、答えは君の想像にお任せしましょう」

静かに瞳を閉じた後、帽子屋さんは私の手を取った。

結局答えはわからないまま、私は彼の煙るような瞳を見ながら問いかける。

○○「どうしていつも私に会う度に不思議な問いかけをするんですか?」

マッドハッター「おや、逆に私に質問ですか?」

彼は私の耳元に唇を寄せて、囁くような声で言う。

マッドハッター「さて、どうしてでしょう? ですが私の答えなどどうでもいい。君との会話は私にとって大変に有意義なものなのですから」

(はぐらかされたのかな?)

眉を寄せる私を見て、どこか楽しそうに彼は目を細める。

(なんだか・・・・からかわれているような気がする)

○○「教えてはもらえないのですか?」

少し口を尖らせて、もう一度彼に問いかけてみる。

すると彼は意外そうな顔をしたのち、しばらく口をつぐみ、

深く何かを考える素振りを見せたのだった・・・・ー。

 

 

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