月最終話 元気の充電

翌日…ー。

太陽はまぶしく輝き、暖かな陽射しを国に降り注いでいる。

ヴィオ「これからも一緒に、この国で燃え上がろうぜ!!」

(一番にはなれなかったけど…ヴィオさんの思いは皆に届いたよね)

ヴィオさんの部屋で彼と一緒に過ごしながら、私は昨日のことを繰り返し思い出していた。

ヴィオ「はぁ…短距離争の挑戦で外にいることが多かったから。 こうしてゆっくりするのは、随分久しぶりだな」

独り言のようにヴィオさんはつぶやいて、体をソファにもたれかける。

○○「ずっと頑張ってましたから…今日くらいはお休みでいいんじゃないですか?」

ヴィオ「そうかー?体がなまっちまいそうだ」

○○「ヴィオさんは本当に体を動かすことが好きなんですね」

ヴィオ「ああ!毎朝起きたら筋トレはかかさないし、寝る前もかかさないからな。 それに、食べ物も気を使って…」

そこまで喋ったとこで、ヴィオさんは口をつぐんだ。

○○「ヴィオさん…?」

ヴィオ「いや…昨日は、また格好悪いとこ見せちまった、と思ってな…」

○○「そんな…格好悪くなんてありません」

ヴィオ「けど、今度こそはって本気で思ってたんだ。何でいつも、あと一歩のところで…格好悪い…」

悲しげにまつ毛を伏せる様子に胸がちくりと痛んだ後、心に熱が宿ってきて…

○○「ヴィオさん、本当に格好悪くなんかありませんでした。むしろ私はすごく感動しました。 いくら記録は破れなくても、競技で一番になれなくても。 真剣にそれを目指して頑張ることが、皆に新しい力を与える…ヴィオさんを見てるとそう思います。 私にとっては、そんなヴィオさんが一番だって…」

ヴィオ「っ…!?」

ヴィオさんが驚いた顔でじっと私を見つめている。

(あ…ー)

思いのままに話し過ぎたことを一瞬恥ずかしく感じるものの、

一度飛び出してしまった言葉は止めることができなくて…ー。

○○「…ヴィオさんはたくさんの人に、夢を与えてくれています。 私にも、あの男の子にも、この国のたくさんの人にも…! だから格好悪くなんて絶対にないし、これからもヴィオさんのままで変わらずにいてください。 私は、そんなヴィオさんをずっと応援していきたい…!」

昨日受けた大感動のままに、ヴィオさんに訴えかける。

ヴィオ「○○…ずっとって、それは」

(あ…今のって、まるで告白みたいだった…!?)

○○「あの、私…ー」

恥ずかしさにどうにかなりそうになりながら、慌てて席を立つ。

けれどそれは許されず、すぐにヴィオさんに腕を掴まれてしまった。

ヴィオ「駄目だ。行かせない」

ぐっと引き寄せられ、振り返ったヴィオさんの顔は…

今日まで見てきたどのヴィオさんとも違う、初めて見るものだった。

(ヴィオさん…?)

トクントクンと、胸の奥で鼓動が鳴り始める。

ヴィオ「そう言ってくれるなら、今も傍にいてくれ。 そして、これからも…ずっと…」

ヴィオさんにされるがまま、彼の隣に座らされる。

そしてヴィオさんは、私の肩にそっと自身の頭をもたげた。

スチル(ネタバレ注意)

ヴィオ「オマエの言葉は不思議だな…。 オレの腹の底から、力を湧き上がらせてくれるような、不思議な力を持っている」

いつもとは違う物静かな声色で、ヴィオさんが囁くように言う。

ヴィオ「それに、こうしてると…安心する」

高鳴る胸と触れ合う体に戸惑いながら、ヴィオさんをそっと見ると…

いつでもきりっとしている眉が下がり…憂いを帯びた横顔が、窓から差し込む光に照らし出されていた。

ヴィオ「オレは皆を元気にする…けど、オレのことも○○が元気にしてくれるか?」

○○「私が…?」

ヴィオ「ああ」

擦り寄せられる彼の髪が頬に触れてくすぐったい。

(私も…ヴィオさんに元気をあげたい)

(笑っていて欲しい…)

ヴィオさんと同じ気持ちを共有していることが嬉しくて、心が満たされていくのを感じる。

○○「はい、もちろんです」

微笑みかけると、ヴィオさんが嬉しそうに目を細めた。

ヴィオ「少しだけこのまま…元気を充電させてくれよ。いいだろ?」

ほんのり甘えるようなねだるような声で言われて、私は小さく頷いた。

○○「…はい。このまま、もう少し…」

ヴィオさんのぬくもりを感じながら、私はそっと…

太陽の香りのするヴィオさんの髪を撫でていたのだった…ー。

 

 

おわり。

 

<<月7話||月SS>>