人影のない穴場の入江を見つけた私達は、アイスを買うため、一度その場を離れた。
ビーチに向かって砂浜を歩いていく途中で、見晴らしのいい高台が見えてきた。
陽影「お、ちょっと登ってみないか」
〇〇「はい」
海に突き出た形の高台から、浜辺のほうを振り返ると、パラソルが乱立するビーチが見渡せた。
〇〇「たくさん人がいますね」
陽影「アイス屋も混んでるかな?」
からかうようにニヤニヤと笑って、陽影さんが私の顔を覗き込む。
〇〇「べ、別にアイスは……」
陽影「ハハハッ!」
笑いながらその場にしゃがみ込むと、陽影さんは身を乗り出して、海の中を覗き込んだ。
陽影「なあ見てみろよ。水が澄んでてすごい綺麗だぞ。 飛び込んだら気持ちいいだろうな」
そんな陽影さんの背中を見つめていたら、私の中にちょっとした悪戯心が湧いてきた。
(背中、押してみようかな……)
もちろん落ちないように、指先だけでトンと背中に触れてみると…―。
陽影「わああ……!?」
陽影さんが大声を上げて、盛大に尻餅をついて私を見上げた。
〇〇「ご、ごめんなさい……!まさかこんなに驚かせちゃうとは思わなくて……」
陽影「オマエなー!なにして……る……クククッ……」
途中から声が震え、最終的にはおなかを抱えて笑い始める。
陽影「いまの俺の間抜けな声……ひどいわ……ククッ……」
涙目で笑う陽影さんが、起こしてくれというように、私に手を伸ばしてきた…―。