シューズの中に入っていた画鋲で足を怪我したヴィオさんは、簡単に手当てを受けた後、すぐにウォーミングアップを始めていた。
(いくら画鋲でも、血を滲んでいたし……)
(それに……)
さきほど手当てをした時、ヴィオさんの足がかすかに震えていた。
瞳もせわしく瞬かせていて、彼の心の動揺が伝わって来るようで……
○○「ヴィオさん……やっぱり、日を改めた方がいいんじゃないでしょうか」
心配でたまらなくなり、私は彼にそう問いかけた。
ヴィオ「いや、今日でなきゃ駄目だ。今日でないと…意味がない」
有無をいわさぬヴィオさんの姿には、鬼気迫るものさえ感じられる。
ヴィオ「○○は、観客席であの男の子と一緒に見ててくれ。 いいな?」
ヴィオさんは私の両肩を手で掴むと、真剣な顔で私を見据えた…―。