ヴィオ「オレもこれから、世界一の記録に挑戦する予定があるんだ」
○○「ヴィオさんが?」
ヴィオさんの瞳が、生き生きと輝き出す。
ヴィオ「自分で言うが、オレはなんでも得意だ!だけど、記録はいつも二位止まり……。だが、絶対今日こそは一番になってみせるぜ! 一番でなきゃ意味がない。オレは一番が大好きなんだ!」
ぐっと拳を握りしめながら、ヴィオさんは私に詰め寄った。同時に、彼の胸の奇妙な絵も私に近づく。
(な、なんだか怖い……)
ヴィオ「せっかくだ。一緒に来てくれるだろ?」
○○「あ…」
私の答えを待たずに、きつく手を握って駆け出したヴィオさんに、私も惹き込まれるように一緒に走り出す。
(元気な人だな。一緒にいると、私まで明るくなってくる)
けれど一つだけ……
(……服装のことは、聞かないでおこう)
そう、心の中でつぶやきながら…―。
澄み渡る空の下、街の人達の活気の良い声が飛び交っている。
ヴィオさんに連れられて、私は賑わうレコルドの街までやってきていた。
ヴィオ「大丈夫か?そんなに走るの速かったか?」
ヴィオさんが心配そうに私の顔を覗き込んでくれる。
(す、すごく速かったけど……ヴィオさんは全然息が切れてなくてすごいな)
あまりに速く走るので途中から歩いてもらったけれど、それでもヴィオさんの速さについていくのがやっとだった。
ヴィオ「早く着いたほうがいいよなって……いつもみたいに走ってた」
○○「大丈夫です。本当に速くてびっくりしただけで……」
ヴィオ「またやってしまった。 オレ、一つのことを考えると、周りが全く見えなくなるんだ……」
(わかるかもしれない……)
けれど困った様子で頭を搔くヴィオさんは、なんだか可愛らしい。その時…―。
街の人1「ヴィオ王子!今日も何かに挑戦するのかい!」
街の人2「あら、本当。ヴィオ王子だわ!記録の挑戦をするなら後で私も見に行くわね」
ヴィオ「ああ!皆ありがどうな」
街の子ども1「王子様―っ、今度世界新記録出すってほんとう!?」
街の子ども2「世界いち―!」
ヴィオ「当たり前だ!絶対にオレ、やり遂げてみせるからな。 成せばなる……!!」
ヴィオさんは、たくさんの街の人々に話しかけられて、熱意みなぎる瞳をまぶしいほどに輝かせながら、ガッツポーズをする。
(皆からこんなに応援されて、慕われて……真っ直ぐで、素敵な人なんだろうな)
そのやり取りを、微笑ましく思っていると……
街の子ども3「でも、王子様のお洋服、今日もださ~い!!アハハ!」
○○「……」
(やっぱり、変って思われてるんだ……)
ヴィオ「そうか?まあ、オレはそういうことについてはわからないからな」
怒る様子もなく、ヴィオさんは真面目にそう返す。
街の子ども3「もっとお洋服のお勉強したほうがいいよ~!ヴィオ王子、へん!!」
ヴィオ「いいんだ!オレは一番になるために時間を使いたいんだ! ○○も、今日は見ててくれよな。 オレ、絶対に皆の声援と期待に応えるから!」
痛快なほど爽やかな笑顔は、この街の他の誰よりも煌めいて見えた。
…
……
その後、目的の競技場まで街の人々と会話を交わしながら進んでいくと…―。
(ここは?)
○○「ここで何をするんですか?」
ヴィオ「それはな……」
ヴィオさんは、先ほどと変わらぬ笑顔でじっと私を見つめて…―。
ヴィオ「今日、行われるのは……パンツ重ね履きの限界記録への挑戦だ!!」
○○「え…―」
(パ、パンツ……!?)
堂々と、かつ満面の笑みで教えてくれたヴィオさんを見て、私は開いた口が塞がらなかった…―。