第2話 世界一への挑戦

ヴィオ「オレもこれから、世界一の記録に挑戦する予定があるんだ」

○○「ヴィオさんが?」

ヴィオさんの瞳が、生き生きと輝き出す。

ヴィオ「自分で言うが、オレはなんでも得意だ!だけど、記録はいつも二位止まり……。だが、絶対今日こそは一番になってみせるぜ! 一番でなきゃ意味がない。オレは一番が大好きなんだ!」

ぐっと拳を握りしめながら、ヴィオさんは私に詰め寄った。同時に、彼の胸の奇妙な絵も私に近づく。

(な、なんだか怖い……)

ヴィオ「せっかくだ。一緒に来てくれるだろ?」

○○「あ…」

私の答えを待たずに、きつく手を握って駆け出したヴィオさんに、私も惹き込まれるように一緒に走り出す。

(元気な人だな。一緒にいると、私まで明るくなってくる)

けれど一つだけ……

(……服装のことは、聞かないでおこう)

そう、心の中でつぶやきながら…―。

澄み渡る空の下、街の人達の活気の良い声が飛び交っている。

ヴィオさんに連れられて、私は賑わうレコルドの街までやってきていた。

ヴィオ「大丈夫か?そんなに走るの速かったか?」

ヴィオさんが心配そうに私の顔を覗き込んでくれる。

(す、すごく速かったけど……ヴィオさんは全然息が切れてなくてすごいな)

あまりに速く走るので途中から歩いてもらったけれど、それでもヴィオさんの速さについていくのがやっとだった。

ヴィオ「早く着いたほうがいいよなって……いつもみたいに走ってた」

○○「大丈夫です。本当に速くてびっくりしただけで……」

ヴィオ「またやってしまった。 オレ、一つのことを考えると、周りが全く見えなくなるんだ……」

(わかるかもしれない……)

けれど困った様子で頭を搔くヴィオさんは、なんだか可愛らしい。その時…―。

街の人1「ヴィオ王子!今日も何かに挑戦するのかい!」

街の人2「あら、本当。ヴィオ王子だわ!記録の挑戦をするなら後で私も見に行くわね」

ヴィオ「ああ!皆ありがどうな」

街の子ども1「王子様―っ、今度世界新記録出すってほんとう!?」

街の子ども2「世界いち―!」

ヴィオ「当たり前だ!絶対にオレ、やり遂げてみせるからな。 成せばなる……!!」

ヴィオさんは、たくさんの街の人々に話しかけられて、熱意みなぎる瞳をまぶしいほどに輝かせながら、ガッツポーズをする。

(皆からこんなに応援されて、慕われて……真っ直ぐで、素敵な人なんだろうな)

そのやり取りを、微笑ましく思っていると……

街の子ども3「でも、王子様のお洋服、今日もださ~い!!アハハ!」

○○「……」

(やっぱり、変って思われてるんだ……)

ヴィオ「そうか?まあ、オレはそういうことについてはわからないからな」

怒る様子もなく、ヴィオさんは真面目にそう返す。

街の子ども3「もっとお洋服のお勉強したほうがいいよ~!ヴィオ王子、へん!!」

ヴィオ「いいんだ!オレは一番になるために時間を使いたいんだ! ○○も、今日は見ててくれよな。 オレ、絶対に皆の声援と期待に応えるから!」

痛快なほど爽やかな笑顔は、この街の他の誰よりも煌めいて見えた。

……

その後、目的の競技場まで街の人々と会話を交わしながら進んでいくと…―。

(ここは?)

○○「ここで何をするんですか?」

ヴィオ「それはな……」

ヴィオさんは、先ほどと変わらぬ笑顔でじっと私を見つめて…―。

ヴィオ「今日、行われるのは……パンツ重ね履きの限界記録への挑戦だ!!」

○○「え…―」

(パ、パンツ……!?)

堂々と、かつ満面の笑みで教えてくれたヴィオさんを見て、私は開いた口が塞がらなかった…―。

 

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