記録の国・レコルド 星の月…―。
ヴィオ王子を目覚めさせた私は、彼に招待を受けこの国へやって来ていた。
(すごい……)
古典的な、それでいて近代を思わせる不思議な町並みに私は目を奪われる。
特にこの区画では、街中にあるスクリーンにひっきりなしにニュース映像が飛び込み、建物の壁には数多くの世界新記録の横断幕が垂れ下がっている。
(とても活気があって、賑やかな国だな)
溢れんばかりの街の熱気を受けながら、目的の城へと向かった。
謁見の間へ通されてすぐ、待っていたと言わんばかりに薄紅色の髪を揺らして王子が立ち上がった。
ヴィオ「やっと来てくれたな!道に迷わなかったか!?」
ヴィオさんはまくし立てるように言いながら私に近寄り、瞳を輝かせた。
○○「はい。招待してくださってありがとうございます」
ヴィオ「何だよ、他人行儀な奴だな!」
そう言ってぽん、と私の肩を叩く。初めて触れた彼の大きな手のひらの感触とその温かさに、予期せず鼓動が跳ねた。
けれど…―。
(なんだか……独特の服センスをしているような……)
私は、彼の装いに目を奪われてしまう。首に巻かれたストールの先についているのは、動物とも言えないお化けのようなキャラクター。見たこともないような、左右の丈が違う個性的なボトム。
(それに、何よりも……)
彼の胸の辺りに描かれている、目のような……得体のしれないものが、私をじっと見ている気がした。
ヴィオ「ん?どうした?」
私の視線に気付いたのか、ヴィオさんが目をぱちりと瞬かせる。
○○「あ……いえ……」
どう言ったものかと口ごもっていると……
ヴィオ「これか?フレシアンって国で流行ってるらしいんだけど。 なんでも、最先端の芸術なんだそうだ!!」
彼の快活な笑顔を見ると、さらに何も言えなくなってしまう。
ヴィオ「そんなことより、せっかく来てくれたんだ!肩の力を抜いて、楽しんでってくれよな! 昼間の街は新しい記録に関する情報が、がんがん入ってきて賑やかなはずだ! あらゆる記録を司る国らしいだろ?」
○○「あらゆる記録?」
ヴィオ「ああ!オレはそん中でも、『世界一』に関する記録を司ってるんだ!」
(世界一に関する記録……ギネスみたいなものかな?)
○○「すごく力強い雰囲気の国で素敵ですね」
そう言うと、ヴィオさんはますます嬉しそうな顔で明るい笑い声を上げた。
ヴィオ「ありがとうな!っと、こうしちゃいられないぞ。 オレもこれから、世界一の記録に挑戦する予定があるんだ」
○○「ヴィオさんが?」
(王子自らが、世界一の記録に?……一体、何の記録だろう?)
瞳を瞬かせる私に、ヴィオさんのきらきらとした視線が注がれた…-。