男「消えろ、狂気の王子!」
ヘラクレス「!」
突進してくる男に、ヘラクレスはとっさに腕を振り上げた。
〇〇「ヘラクレス!」
けれどヘラクレスは、男の目の前でその手を止めた。
男「!」
ヘラクレス「もう、帰りなよ。ほら、家族の人も心配してるかも。 だから、ね?」
男は悔しそうに、歯ぎしりをする。
ヘラクレスの表情から笑みが消えた。
ヘラクレス「キミにオレは倒せないよ」
静かな声に、男が息を呑んだ。
男「……」
ヘラクレス「行こうか、〇〇ちゃん」
うなだれる男を残し、私達は手をつなぎ歩き出した。
ヘラクレス「森……どうしよっかな~……。 植えなおした方がいいよね? あれじゃあ、動物達も怒るよね」
ヘラクレスが頭を抱えて唸った。
(よかった。いつものヘラクレスだ……)
嬉しさに、思わず声を上げて笑った。
そんな私の姿にショックを受けたように、彼は金色の瞳を見開く。
ヘラクレス「笑った~! どうして笑うの~!」
〇〇「だって……」
ころころ変わる彼の表情に、胸が温かくなっていく。
(そっか私、ヘラクレスのことが……)
胸に宿る気持ちが何かに気づいて、またトクンと音を立てた。
ヘラクレス「〇〇ちゃん?」
〇〇「ううん。何でもない」
天の川が私達の行く道を照らしている。
淡い光が、胸に灯った気持ちのように優しく輝いていた…―。