第4話 海を目指して

さんさんと輝く太陽の下…-。

海へ向かうことにした私達は、勘を頼りに脇道をどんどん進んでいった。

歩くほどにメインストリートのざわめきは遠ざかって、潮の匂いが濃くなってくる。

○○「あ……!」

細道を曲がると突然視界が開け、その先に入江が広がっていた。

周囲に人の姿は見当たらず、白い砂浜の上に視線を向ければ、足跡一つついていない。

陽影「すごいな! きっとここ、観光客の知らない穴場だ」

腰に手をあて、辺りを見回した陽影さんが顔をほころばせる。

(よかった……やっぱり陽影さん、街中にいる時よりずっと楽しそうに見える)

○○「こんな場所を偶然見つけられるなんて、思ってもみなかったです」

陽影「ツイてたな、オレ達」

○○「はい!」

寄せては返す波の音と、カモメの緩慢な鳴き声が響く。

メインストリートを歩いている時と違って、私達は自然な距離で寄り添いながら、海を眺めた。

陽影「なんか……うまく、アレできなくてゴメンな」

○○「え……?」

陽影「……もっとちゃんと、オマエを楽しませてやるつもりだったんだけどさ」

○○「そんな……私、今すごく楽しいです」

陽影「○○……」

○○「陽影さんは?」

陽影「……オレはオマエがいれば、はっきり言って場所なんて……!」

陽影さんが早口でまくし立てるように言う。

その態度がなんだかかわいくて、私は思わず笑ってしまった。

陽影「わ、笑ってんじゃねーよ……」

○○「ごめんなさい」

頑張って笑いを抑えようとした私を、陽影さんが不満そうな顔で睨む。

陽影「とにかく! オマエは別につまらなくはないんだな」

○○「はい、今すごく楽しいです。 んな綺麗な海も見られたし」

陽影「……まあでも、そうだな。 この海辺に来られたのは、すごくよかった」

○○「陽影さんの国の海も素敵でしたけど、ここも素敵ですね」

陽影「……そうだな。 オレも初めて来たけどこんなに綺麗な海があるんだなって、感動した」

陽影さんは、太陽の光を浴びながらまぶしそうに海を眺めた。

陽影「そういやビーチの方では氷菓の国のアイス屋が出店してるらしいぞ」

○○「そうなんですか? 行ってみたいですね! ……あ」

勢い良く聞き返してから、ハッと我に返る。

(……食い意地でちゃった……恥ずかしい)

真っ赤になってうつむいている私の頭を、陽影さんがクシャクシャッと撫で回した。

陽影「ハハッ……なんだよオマエ、アイス好きなの? まあオレも、楽しみにしてるけどな!」

(陽影さん……)

○○「……はい! 早く食べに行きたいです!」

彼の無邪気な笑顔が、私の気持ちを素直にさせてくれて……

飾らない自然な態度でいられる彼との時間は、とても居心地がよかった…-。

 

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