教室内に張り巡らされた鏡の間で、煌めく七色の光が飛び交っている。
(綺麗……こんな展示の仕方もあるんだ)
そんな中、イリアさんは執事さん達に丁寧に光の魔術の説明をしている。
執事「さすがイリア様、とても興味深いものばかりですね」
メイド「王妃様もイリア様にお会いしたいとおっしゃっていたのですが、ご公務で……」
イリア「そうですか、残念です。母上によろしく伝えておいてください」
満足そうに帰って行く執事さん達を、イリアさんはにこやかに見送った。
…
……
執事さん達が帰った後…-。
教室の前の廊下に人影すら過らない。
イリア「……静かですね」
イリアさんは沈黙を破るように、ぽつりとつぶやく。
自嘲気味に微笑むイリアさんを見て、胸がチクリと痛んだ。
(こんな素敵な展示なのに)
きらきらと輝く美しい光は、私達二人だけを照らし出している。
〇〇「イリアさん、私呼び込みをしてきます!」
イリア「〇〇様……?」
〇〇「こんなに素敵な展示なんです、きっと皆実際に見たら…-」
その時…-。
複数の人影が近づいてくる。
同時に、どこか聞き覚えのある声が耳に滑り込んできて……
(もしかして……)
扉が開くと、文化祭の準備を見て回った際に出会った学生達の姿があった。
学生1「イリアさん、〇〇さん、探しましたよ~」
イリア「えっ……」
学生2「ポスターとか貼ってないから、どこで展示が開かれてるかわからなくて」
学生3「皆探していましたよ」
イリア「あ……」
学生4「イリアさんらしいですね」
先ほどまでに静まり返っていたのが嘘のみたいに、賑やかな空気が流れ出す。
学生1「この魔術、綺麗ですね」
イリア「はい! それは…-」
イリアさんは、嬉しそうに皆に一つ一つ説明をしていく。
皆もそれに興味深く耳を傾けて……
学生1「イリアさんの説明はわかりやすいですね」
学生2「うん、難しい内容かと思ったけど……僕にでも理解できる」
イリア「本当ですか!? 魔術の素晴らしさに触れていただけて嬉しいです」
次から次へと皆に褒められ、イリアさんは頬を染めて照れている。
(イリアさん……良かった)
そんなイリアさんの姿を見て、私の心も温かい気持ちでいっぱいになる。
学生4「他の皆にも声を掛けてみるよ」
イリア「ありがとうございます!」
…
……
いつの間にか、イリアさんの展示会場は見物人で溢れていた。
魔術をわかりやすく学べるという噂が広がっているようだった。
見物人「イリアさん、この魔術を詳しく教えてくれませんか?」
イリア「これは…-」
イリアさんが一生懸命作った展示が、たくさんの人に見られている。
イリア「……」
ふと、イリアさんと視線が合う。
忙しい対応の隙を見て、イリアさんは私の元へとやってきた。
〇〇「イリアさん?」
眼鏡の奥の、知性的な瞳が細められて……
イリア「すべて、〇〇様のお陰です」
胸元に手を当て、イリアさんはお辞儀をするかのように私の顔を覗き込む。
その綺麗な所作に、胸が小さな音を立てた。
〇〇「……そんなことないです。イリアさんが頑張ったから」
イリア「……か?」
人の声に重なり、イリアさんの声が聞こえない。
〇〇「……えっ?」
聞き返すと、イリアさんの顔が私の耳元に寄せられる。
イリア「この後、二人で文化祭楽しみませんか?」
(二人で……)
少し甘い響きをはらんだイリアさんの声がいつまでも耳に残り、私の胸を高鳴らせた…-。