第4話 魔術のヒント

私とイリアさんは文化祭の準備で賑わう校内を歩き回り、新しい魔術のヒントになるものを探していた。

イリア「演劇に喫茶店……あっ、絵画の個展を開く方もいらっしゃるんですね」

個展が開かれる教室の前には、独特な絵が飾られている。

イリア「う~ん」

イリアさんはその絵を眺めながら、難しそうな顔をする。

イリア「私には絵心がないので……残念ですがこの絵の伝えたいことがわかりかねます」

〇〇「そうですね……私にもちょっと、わからないです」

(絵心がないからわからないのかな……? すごく前衛的すぎて)

二人で顔を見合わせ、困ったように笑い合う。

イリア「あ、あちらの展示も気になりますね。次の場所へ行きましょうか」

〇〇「そうですね」

??「文化祭こそ、学園中のボーイズ&ガールズに、ボクの絵を披露する素敵な日なのさ

??「来た人達が逃げ出してしまわなければいいのですが……」

校舎内に飛び交う、活気に溢れる皆の声を聞きながら……

私とイリアさんは次を目指した…-。

……

少し歩いていくと、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

(いい匂い……)

イリア「〇〇様、あれは何ですか!? 鉄板の上で、何やら丸い物が回されています!」

イリアさんが興奮気味に私に質問をする。

〇〇「あれは、たこ焼きですね」

イリア「たこ焼き?? とてもいい匂いがしますが、あれは食べ物なのですか?」

〇〇「はい。とても美味しい食べ物ですよ」

イリア「そうなのですか……是非食べてみたいです」

〇〇「では、頼んで食べさせてもらいましょうか?」

そう言うと、イリアさんの目がキラキラと輝き出す。

イリア「ありがとうございます、〇〇様……!」

私達は、たこ焼きを焼いている学生の元へと向かった。

〇〇「すみません。一つ、食べさせてもらってもいいですか?」

学生1「いいよ。でも、たこを切らしちゃって、入ってないけど……」

〇〇「そうなんですか……それはお困りですね」

学生1「そうなんだよね~。できれば入れた状態で練習したいんだけど……。 肝心のたこが無いと……」

イリア「〇〇様……」

振り向くと、私達の話を聞いていたイリアさんが愕然とした表情になっていた。

イリア「あの、今更ではありますが、たこ焼きの『たこ』とは……?」

〇〇「あ……海にいる、あの八本足の」

そう答えると、イリアさんの目がさらに見開かれた。

イリア「……!! 書物でしか読んだことありませんが……。 たこ焼きとは、あの生物を焼く材料なのでしょうか……!? しかもあの生物をこのような小さな球の中に入れるなんて……魔術を使っているのですか?」

イリアさんが瞳を輝かせながら、学生に詰め寄る。

学生1「あの……?」

イリア「物体を縮める魔術は、かなり高度なもののはず……すごいです!」

(な、何か勘違いを……)

〇〇「イリアさん…-」

イリア「〇〇様、やはり校内を見回って良かったです。 魔術を使った料理はソルシアナにもありますが……たこ焼きは、是非国に持ち帰り研究したいです! その魔術を……今ここで見せてくださいませんか!?」

饒舌なイリアさんに、私達は言葉をかけるタイミングを見つけられないでいた…-。

 

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