私とイリアさんは文化祭の準備で賑わう校内を歩き回り、新しい魔術のヒントになるものを探していた。
イリア「演劇に喫茶店……あっ、絵画の個展を開く方もいらっしゃるんですね」
個展が開かれる教室の前には、独特な絵が飾られている。
イリア「う~ん」
イリアさんはその絵を眺めながら、難しそうな顔をする。
イリア「私には絵心がないので……残念ですがこの絵の伝えたいことがわかりかねます」
〇〇「そうですね……私にもちょっと、わからないです」
(絵心がないからわからないのかな……? すごく前衛的すぎて)
二人で顔を見合わせ、困ったように笑い合う。
イリア「あ、あちらの展示も気になりますね。次の場所へ行きましょうか」
〇〇「そうですね」
??「文化祭こそ、学園中のボーイズ&ガールズに、ボクの絵を披露する素敵な日なのさ
」
??「来た人達が逃げ出してしまわなければいいのですが……」
校舎内に飛び交う、活気に溢れる皆の声を聞きながら……
私とイリアさんは次を目指した…-。
…
……
少し歩いていくと、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
(いい匂い……)
イリア「〇〇様、あれは何ですか!? 鉄板の上で、何やら丸い物が回されています!」
イリアさんが興奮気味に私に質問をする。
〇〇「あれは、たこ焼きですね」
イリア「たこ焼き?? とてもいい匂いがしますが、あれは食べ物なのですか?」
〇〇「はい。とても美味しい食べ物ですよ」
イリア「そうなのですか……是非食べてみたいです」
〇〇「では、頼んで食べさせてもらいましょうか?」
そう言うと、イリアさんの目がキラキラと輝き出す。
イリア「ありがとうございます、〇〇様……!」
私達は、たこ焼きを焼いている学生の元へと向かった。
〇〇「すみません。一つ、食べさせてもらってもいいですか?」
学生1「いいよ。でも、たこを切らしちゃって、入ってないけど……」
〇〇「そうなんですか……それはお困りですね」
学生1「そうなんだよね~。できれば入れた状態で練習したいんだけど……。 肝心のたこが無いと……」
イリア「〇〇様……」
振り向くと、私達の話を聞いていたイリアさんが愕然とした表情になっていた。
イリア「あの、今更ではありますが、たこ焼きの『たこ』とは……?」
〇〇「あ……海にいる、あの八本足の」
そう答えると、イリアさんの目がさらに見開かれた。
イリア「……!! 書物でしか読んだことありませんが……。 たこ焼きとは、あの生物を焼く材料なのでしょうか……!? しかもあの生物をこのような小さな球の中に入れるなんて……魔術を使っているのですか?」
イリアさんが瞳を輝かせながら、学生に詰め寄る。
学生1「あの……?」
イリア「物体を縮める魔術は、かなり高度なもののはず……すごいです!」
(な、何か勘違いを……)
〇〇「イリアさん…-」
イリア「〇〇様、やはり校内を見回って良かったです。 魔術を使った料理はソルシアナにもありますが……たこ焼きは、是非国に持ち帰り研究したいです! その魔術を……今ここで見せてくださいませんか!?」
饒舌なイリアさんに、私達は言葉をかけるタイミングを見つけられないでいた…-。