放課後…-。
約束通り、私はサイさんの寮室へと向かった。
(サイさんの部屋は……ここだよね?)
○○「サイさん、○○です」
ノックをして、声を掛ける。
するとわずかな間の後、扉が開かれ…-。
○○「……!」
そこには、恭しく頭を下げているサイさんの姿があった。
○○「えっ……サイさん!?」
サイ「おかえりなさいませ、○○お嬢様」
サイさんの声は、少し上ずってしまっている。
(一体、これは……?)
私はかける言葉を探しながら、先ほどのサイさんの姿を思い返す。
(落ち着かない様子だったことと、関係しているのかな……?)
サイ「お嬢様、いかがなさいましたか?」
サイさんは、ぎこちない微笑みを私に向けてくる。
サイ「お嬢様、どうぞお入りください」
○○「は、はい……っ」
サイさんは私をテーブルに案内した後、椅子を引いてくれるけど…-。
上手に引けずに、音がガタガタと鳴ってしまう。
サイ「……!」
一瞬、サイさんは動揺した表情を見せたものの、すぐにぎこちない笑みを浮かべた。
サイ「……どうぞ、お嬢様」
○○「あの……サイさん」
サイ「お飲み物はコーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」
サイさんは、なおもこのやりとりを続けようとする。
(水を差すようなことは……しない方がいいかな)
戸惑いながらも、私は最後まで彼に付き合うことにした。
○○「では……紅茶で……」
サイ「かしこまりました」
サイさんは丁寧にお辞儀をして、その場を立ち去る。
(サイさん、まるで執事さんみたい……)
暫くすると、サイさんはポットとカップ、それとソーサーを持ってやってきた。
サイ「では、失礼いたします」
次の瞬間、サイさんは右手に持ったポットを高らかに上げる。
そして、その位置からカップに紅茶をつぎはじめた。
(そんなに高い位置から!?)
サイ「……あっ!」
サイさんが小さく声を上げた瞬間、手元が大きくぶれた。
(あっ……!)
熱々の紅茶が、サイさんの手の甲に降り注いでいく…-。
サイ「あっ、あつっ……いっ!」
サイさんの手の甲は、みるみるうちに赤くなる。
○○「早く冷やさないと!」
(サイさん……一体!?)
あらゆる疑問が脳裏に浮かびながらも、私はサイさんの手を引き、洗面所へと急いだのだった…-。