学園都市・メモワール 影の月…-。
学園生活を通し、専門性の高い知識、マナーや協調性を身につけることを目的としたメモワール学園には、世界中の王族や貴族の子女達が、それらを短期間で学ぶために集まってくる。
(やっと、慣れてきたかな……)
校長に招待を受け、私がこの学園に通うようになってからしばらく……
学生達は授業の合間をぬって、もうすぐ行われる文化祭の準備に力を注ぎ……
学園内は活気に溢れ、楽しい空気に包まれていた。
(文化祭当日も、晴れるといいな)
ふと窓の外を見ると、真っ青な空が広がっている。
その美しい空の青さは、宝石の国・サフィニアの王子、サイさんを彷彿させた。
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サイ『○○も、ここに通うの? そうか、それなら楽しくなりそうだよ』
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サイさんはご両親や執事さんから、他の王族と一緒に学んだり交流できるいい機会だからと進められて来ているものの……
最初は学園に通うことに消極的だったらしい。
(だけどここで再会した時、本当に嬉しそうに微笑みかけてくれて……)
あの笑顔を思い出すと、胸が温かい気持ちでいっぱいになる。
(サイさんは、文化祭で何をするのかな?)
そんなことを思っていると、ちょうど前方にサイさんの後姿を捉えた。
○○「サイさん」
駆け寄って声を掛けると、彼は振り返って小さく微笑む。
サイ「○○。お疲れ様」
○○「もうすぐ文化祭ですね。準備は順調ですか?」
サイ「ああ……うん……」
サイさんは言葉を濁す。
(どうしたのかな?)
いつも冷静なサイさんらしくない、どこか落ち着かずそわそわした様子に、違和感を覚える。
サイ「あのさ、○○。もしよければ、放課後に寮の……僕の部屋に来てくれないかな? もちろん……無理にとは言わないけど」
サイさんは遠慮がちに、ぽつりとそうつぶやく。
○○「はい、大丈夫ですよ」
サイ「本当!? ……ありがとう。 じゃあ、後で……」
サイさんは嬉しそうに微笑むと、小さく手を振って立ち去って行った。
(だけど……部屋に来て欲しいなんて、一体どうしたんだろう)
(もしかして、何か悩み事とか……?)
私はそう思いながら、文化祭の準備で賑わう教室に向かう彼の後ろ姿を、じっと見つめたのだった…-。